29．コーヒーミル。 ページ29
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1口啜ったら、やっぱり少し苦かったけど、酸味が爽やかで、鼻から抜けるいい香りがした。
ブラックの珈琲をちゃんと飲めそうなのは初めてで、飲めた自分が大人になったような感覚もあって感動。
「おいしい、」
「ふふ、ここうまいんだよ、おれのお気に入りすぽっと。」
屋上と同じく、先生のお気に入りスポットにばかり足を踏み入れてしまう私は、きっと何か縁があるんじゃないか。
変な期待が過って、被りを振る。
先生がくれた黄色い本に手をかけ、1ページ捲ったら、目次がでてきた。
「なんでここにいんの？」
読み出そうと手を進め出した時、先生が煙草を消しながらそう尋ねる。
「そこの公園で、夏祭りの準備してて、出店を手伝うんです。休憩中で時間あったから……。」
そう答えたら、「あーお祭りか」と忘れてたものを思い出したように呟いて、椅子に深く腰掛け直した。
「なんの店？」
「きゅうり……」
「きゅうり？え、1本漬け？？」
「はい」
「マイナーなとこ行ったね笑笑」
そう言って笑う先生の元に、店員さんが珈琲を運んできた。
ありがと、とお礼を言って珈琲に息を吹きかけて冷ます先生のほっぺたが、少しだけ膨らんで丸みを帯びる。
きっとこの調子じゃ、今この本を読んだとしても頭には入ってこないだろう。
ただ読むだけ読んで、活字の羅列に目を通すだけになりそうで、開いた本を静かに閉じた。
何を話すわけでもなく、ゆったりと時間は流れる。
手元の珈琲は、ちゃんと減っていって、思っていたよりブラックの珈琲がいいものだった。
同じ豆が欲しいなんて思うほど。
買ったところで家には珈琲を挽く為の機械なんてないんだけど。
机の上の携帯の画面をみると、もう１時間前の時刻に近づいていた。
伝票を持って立ち上がろうとして、荷物をまとめていたら、先生が横から手を伸ばして伝票を取り上げる。
「ちょ、」
「いいよ、俺払っとくから。バイト頑張れ」
そう言って、呑気に次の煙草に火をつけた先生は、自分の伝票に私の伝票を挟んで置き直した。
そこから自分の伝票を取り上げるのも、なんだか不自然な気がして、私が伸ばした手は目標を失ってあっさり落ちる。
「ありがとうございます。」
先生にお礼を言ったら、店員さんがやってきて、「本はそのままで大丈夫ですよ」とにこやかに笑った。
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憂(プロフ) - みやさん» みやさん。コメントありがとうございます。こちらの私情であるにも関わらず応援して頂きまして、本当にありがとうございます。これからも先生と主人公ちゃんをよろしくお願い致します( •̥-•̥ ) (2022年12月1日 9時) (
レス) @page40 id: 39a6e0a5de (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 憂さん、はじめまして せつと申します。人生最大ゴタゴタの中素敵なお話を紡いでくださりありがとうございます。スローでもよきよき♪待ってますので 憂さんのペースでどうぞ。いい子で次のお話待ってますね。 (2022年12月1日 9時) (レス) @page40 id: a88f73c135 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：憂 | 作成日時：2022年11月4日 3時
