21．フードのポッケ。 ページ21
.
バイトが終わり、店の前に出てため息をついたら
遠くでセミが鳴いてるのが聞こえてきた。
もうそんな季節か、なんて柄にもなく思って
少し目をつぶって耳を澄ます。
澄まさなくても、うるさいほどの音量で鳴いている虫の聲に隠れるように、蛙の鳴き声も聞こえてきている。
カエルなんかいる？って少し疑いつつ、
レジからは見えない、店の角の方でしばらく目をつぶっていた。
そうしていると、足元が崩れていくような、グラグラするような、そんな変な感覚に襲われて
怖くなって目を開けた。
「わっ」
目を開けると、その1段低い場所に、何故か先生がいる。
近さに驚いて思わず後ろによろめいたら、私の腕を引っ張って下に降ろした。
私が働いているコンビニの前は、駐車場の銀の柵がない。
でも代わりに駐車場が１段低くなっていて、
入口の前から横に、歩道が続くように少し高くなっている。
「びっくり、した、」
引っ張られたことにも、目の前にいたことにもびっくりして思わず零すと、
「おばけ見たみたいな顔、笑笑」
なんてふにゃっと笑った先生。
隣には、初めて会った時にいた、あのヨレヨレ姿のイケメン君が煙草を蒸かしていた。
でも今日は、ヨレヨレしてない。
どちらかと言えばパキッとしてる。
パリッと？
ピシッと？
そんな感じでちゃんとスーツを着てた。
「こんばんは、」
「こんばんは」
遅めの挨拶をしたら、淡々としたトーンでそう返された。
「これ、おれの高校の同級生の、にの」
「これって言うなや。」
その人に向かって親指を向けて、私に紹介しながら、
先生は、ハハ！と乾いた笑い方をして
いつにも増して楽しそうな顔をしていた。
目の前に停る、消していない車のヘッドライトが眩しい。
「こんなとこで居眠り？確かに暖かいけどさ〜」
と笑いながら、私の頭に手を置く先生。
今は、触れられたくなくて。
先生への気持ちを殺して、消すことに精一杯だから、やめて欲しくて。
思わずその手から逃げるように、頭を横に動かした。
「ほーら、おっさんそれセクハラだって！」
「おっさん笑笑、同い年だべ笑笑」
と2人でふざけて笑ってる様子を見て、
私の今抱えてるこの気持ちは、どうにもこの雰囲気には合いそうもないな、と1人俯いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
憂(プロフ) - みやさん» みやさん。コメントありがとうございます。こちらの私情であるにも関わらず応援して頂きまして、本当にありがとうございます。これからも先生と主人公ちゃんをよろしくお願い致します( •̥-•̥ ) (2022年12月1日 9時) (
レス) @page40 id: 39a6e0a5de (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 憂さん、はじめまして せつと申します。人生最大ゴタゴタの中素敵なお話を紡いでくださりありがとうございます。スローでもよきよき♪待ってますので 憂さんのペースでどうぞ。いい子で次のお話待ってますね。 (2022年12月1日 9時) (レス) @page40 id: a88f73c135 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：憂 | 作成日時：2022年11月4日 3時
