君がため。

エピローグ ページ25

章大side


このまま抱きしめて・・・

今度こそ、ほんまもんの、恋人になる。


めっちゃロマンティックな展開やったのになあ。


お母さんのでかい声で目が覚めた。


「章大、章大、
いつまで寝てんの？
そろそろお坊さん、見えるから」


俺の身体をゆらゆら揺らしてくる。


気付いたら、
仏壇の前で寝とった？


あれ？


いやにリアルな夢見てたなあ。

俺、先月８４で死んだじいちゃんになってたみたいや。

いや、じいちゃんは、

名前は章大ちゃうけど。


じいちゃんになって、
子供の頃に亡くなったばあちゃんに恋してた。


仏壇の上に飾られた、

じいちゃんとばあちゃん二人の遺影が、

今までとは違って、俺の目に映る。


「なあ、お母さん、
じいちゃんてさあ、
若い頃、映画スターで歌手やったんやろ？
それで・・・
ばあちゃんは、洋服作っとったよな？
二人て、姉弟やったん？」


そんなん聞いたことないから。


俺が子供の頃は、
いつも仲良かったなあ。


ばあちゃん、めちゃくちゃ優しいてな。

じいちゃんはいつも甘えてた。


本気で惚れた女は、
Aだけやて。


じいちゃん、
普段はそんな言葉、絶対に口に出せへんのに。


ばあちゃんが、亡くなった時、
ぽろっとこぼしてたん、
２０年経った今でも、
やけに鮮明に覚えてるねん。


「二人は血の繋がりはなかってんけど、
姉弟として育ったて、
聞いたことあるわ。
相思相愛やったけど、
戦後で、大変な時で、
いろいろあってやっと結ばれたて。
お父さんに聞いたことがあるわ。
なんで章大が知ってるん？」


「じいちゃんが教えてくれた」


写真を見上げて言うたら。


「この子はまた。
面白いこと、言うわ」


お母さんは、ふふって笑て、
取り合ってくれへんけど。


俺、戦後のあんな時代がどうやったとか知らんし。


絶対にじいちゃんが教えてくれたんやと思うねん。

自分の生き様を。



いつか、続きを見られたらええな・・・


もういっぺん、

A姉ちゃんに会いたい。



俺も本気で若い頃のばあちゃん、



Aに惚れてもうたから・・・

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