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67 慈悲ノ風花 ページ23

そんなこんなで 今も目の前に鬼がいた

季節外れの雪が降る山

そんな情報を聞いて

担当の地域の端っこまで出向いていた

そこには 白髪に赤い瞳を持った

兎のような少女

否 鬼がいた

降り積もる雪の中で

動物の形をした雪の塊を作っていた

この鬼の血鬼術みたいだ

少し 自身の前世と面影が重なる

幼い頃はこんな感じだったのだろう と

でも 人を喰らった匂いはしていた

ただ、数人

二桁にも満たないだろう

それでも この子は人を喰らった

それが罪だ


「お姉ちゃん 鬼狩りさん?」


何かに怯えるような姿

私、ではなさそうだった


『そうだよ』

「やっと、死ねるよ お姉ちゃん お兄ちゃん」


独り言のように呟いたこの子からは

悲しみの匂いがした

この子は人だった頃の記憶があるのだろう

そういう鬼は稀に存在する

図らなくともそうなる鬼もいるんだ

家族を喰らってしまったのか


「お姉ちゃん 雪子 殺して」


雪子 それがこの子の名前だろうか


『雪子ちゃんは優しいね』


「雪子は… 雪子はみんなが大好きだから!」


笑顔でそう告げるこの子は

鬼だなんて思えなかった


『そうか』


この子に鬼になんてならない来世が訪れますように

そう願って刀を抜いた


──雪の呼吸 伍ノ型 慈悲ノ風花(かざばな)──


雪の呼吸の慈悲の刃

振るわれる刃は 痛みを感じない

自ら命を差し出した鬼にだけ振るう刀

消えゆく鬼の体が

晴天時に風に舞うようにチラチラと降る雪

"風花"のようにハラハラと舞ってゆく


「ありがとう」


そんな 雪子ちゃんの声と共に消えていった









──────


やっと伍ノ型出せました

伍ノ型 慈悲ノ風花

風花というのは本文でも説明した通り

晴天時に雪が風に舞うようにチラチラと降ることです

そんなふうに優しい剣技です

水の呼吸でいう 干天の慈雨 ですね


それでは!

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作者名:癒姫 | 作成日時:2019年8月13日 11時

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