*はじめての 3【煉獄杏寿郎】

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咄嗟に足を止めると

ひんやりしたものが頬にあたり
身体がビクッと後ずさった。

「頬が腫れている、さっきのヤツに殴られたのか？」

拭いても拭いても涙は止まらず頷くのが精一杯だった。






「やれやれだな」


宇髄さんは私と目線を合わせるように膝を下ろすと
優しく頭を撫でてきた。


「もう泣くな、話くらいは聞いてやる」


眉尻を下げながら優しく微笑む宇髄さんに
思わず胸が熱くなる。


話してしまいたい。


「.......っ」


でも煉獄さんと約束した。

公にはしないと。


「.......すみません、もう、平気です、」

「どこが平気なんだか」

「........」

「まあ話したくないならしつこくは聞かないが」




恐る恐る宇髄さんを見るとパチンとおでこを叩かれた。

「.......ｯ....」

「屋敷まで送る、行くぞ」






予想外の言葉に戸惑いつつ
宇髄さんの背中を追いかける。


「もたもたするな、俺は忙しいんだ！早くしろ！」

「は、はい！」






気づけば涙も止まり呼吸も楽になっていた。

それから宇髄さんは私を元気づけるかのように
たわいもない話をしてくれた。


あと数分で蝶屋敷に着く。




「......あの...一つ聞いてもいいですか」

「なんだ」

「私の友人が交際している彼の、元交際相手に嫉妬してしまって、彼に酷い態度をとり、彼が怒ってしまったんです」

「......で？」

「そ、それで、友人がどうしようか頭を悩ませていて、宇髄さんの意見を聞きたいな....と」


「意見も何も謝れば済む話だろ」


·······ごもっともです。






「で、ですよね。私も友人にそう言いました！」

「........」

「恋とは難しいものですねえ」

「はは、大して経験もないくせによく言うわ」

「.......っ」







「今日はご迷惑をおかけして本当にすみませんでした。
....こんな物しかないですが...」

飴玉をそっと宇髄さんの手にのせる。

「........」

「では、私はこれで失礼し


と言いかけた瞬間


ぐいっと手首を掴まれた。

「....？」






私の手のひらにそっと飴玉をのせる宇髄さん。


「.....？黒飴嫌いでしたか？」

「まあそんなところだ」

「すみません、今これしかなくて....
また今度改めてお礼させてください！」

「おう！んじゃ俺は帰るな。ちゃんと顔冷やしとけよ」

「はい、ありがとうございました」


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