今日も彼女は想うだけ【煉獄杏寿郎】

　41 ページ41

.





それから3日も熱と喘息に見舞われ、結局終業式も出れないまま夏休みが始まった。



「じゃあそろそろ学校行くねー」

「何時に帰る？」

「荷物取ったらそのままカフェで勉強して帰るから夕方くらいかな？」

「そう…。くれぐれも無理はしないようにね」

「うん！行ってきます！」



今日の予想最高気温は31℃。

アスファルトを焼きつける太陽に比例するかのように
汗がツーっと背中に流れ、 電車に乗る頃には全身汗だく状態。

一号車の一番端っこに座り、
手で顔を扇ぎながらスマホを取り出す。

あれから必ずと言っていいほど
一番最初に開くのは着信履歴。


21:08 着信 51秒


三日経った今でも未だに信じられなくて
番号を暗記してしまうほど見返している。

なんて登録しようか迷いに迷って
結局番号は未登録のまま....

今日こそは登録するぞ、と強く決めて
新規連絡先作成をタップした。



「……うーん」


【先生】はバレちゃうし

【Rさん】はなんだか怪しい

【れんさん】【きょうさん】？

【杏】？



いやでも...


バレたら大変だし
まったく関係ない名前の方がいいかな。

って、一人で舞い上がってるけど
電話なんてもう一生来ないかも。


そんな事を考えながら、ふと上を向けば
つり革につかまっているサラリーマンと視線がかち合ってしまい、ニヤけているであろう顔を隠すように前髪を触わった。



失恋したのに思いのほか落ち込んでいないのは
きっと先生のあの言葉

『俺は君と過ごす時間が何よりも大切だ』

多分、いや絶対、先生が彼女と付き合ったら
また大泣きするだろうけど

先生があんな風に思っていてくれた事が
嬉しくて、幸せで、あの日以降涙は出なかった。

この先どうしたらいいのかなんて
私もさっっぱり分からない。

でも先生が好きな気持ちは変わらないし
この先、他の人を好きになる事は絶対ない

…と思う。




──まもなく---。お出口は左側です。
電車から降りましたら危険ですので電車から離れてお歩きください。




結局私は【apricot】と登録して電車を降りた。



.

　42→←　40

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す