今日も彼女は想うだけ【煉獄杏寿郎】

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カラン、とコップの中の氷が溶ける音が鳴り響く。



背もたれに寄りかかったまま
回らない頭でなんて言うか考えていると

ギシ、っとベッドのきしむ音が聞こえ
先生が隣に座ってきた。



「泣いていた理由も全部話してくれないか」



あの夢が正夢になったら私は耐えられない

だから今度こそ伝えたい


「乙葉？」

「…………」


でも仮に好きだと伝えたら？

先生は自分を責めるかもしれない

絶対にそう

先生は真っ直ぐで優しい人だから

きっと責任を感じてしばらくは落ち込むはず



「…実は」



でも



私は先生が好き。





──だから



「実は先生が職員会議に行ったあと」

「先生がついに付き合えるかもって思ったら
 急に寂しくなっちゃって、泣いたんです。」

「そしたらたまたま中庭にしのぶちゃんが来て
 そのまま家に遊びに行ってました。」





「それでついさっき気づいたんですけど
  私、先生のことが結構好きみたいです。」







「ついさっき？」

「はい、ふふ。」

「だからと言って辛いとかはなくて。
  ……ちょっと寂しいとは思いますけど。」






「そうか」

「はい、だから、大丈夫です！」



「何が大丈夫なんだ？」

「私は大丈夫なので、
先生もあまり深く考えないでほし」


あと少しというところで突然視界が暗くなる。


咄嗟に顔を上げると
先生の顔が目の前にあって

コツンとおでこがくっつく音が聞こえた。


「……っ」


反射的に身体が後ずさり、顔を伏せる。



急になに。

そう思った瞬間、先生の指先が頬に触れた。

びくっと身体が震えて
咄嗟に目を閉じると、先生の手が離れた。



「……っ…せ」

「何故嘘をつく？」


「うそ、なんて、」

「じゃあ何故さっきから一度も俺の目を見ないんだ？」



先生は何に対して嘘だと思っているの。

私なりに一生懸命伝えたのに。

しかもなんか反応薄いし。


「すみません」


ぐっと涙を堪えて、ゆっくり目を開けた。

先生は思ったよりずっと優しい表情で私を見ていて

焔色の瞳が小さく揺れていた。



「君が俺を好きだと気づいたのは
 ついさっきではない。そうだろう？」

「しかし前から想いを寄せていたと言えば
 俺が傷つくから、だから嘘をついた。違うか？」


「…ち、が「だから、目を逸らすなと言っている」



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