逃がさないと言われましても 2【煉獄杏寿郎】

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｢また明日もよろしくお願いします！！｣
｢·····ああ｣


結局あの後、縁側でお茶菓子をいただいて水柱邸を後にした。


師範は今頃屋敷かな森かな、なんて事を考えながら屋敷に向かう。昨日のお花見はあんなに晴れていたのに今日はどんより曇り空で少し小雨がぱらついてる。


───────…桜雨、桜流し

言葉の響きは素敵だけど雨と共に少しずつ桜が散ってしまう姿は、なんだかとても寂しい。


ふと炎柱様の言葉を思い出す。





｢もちろん好きに決まっているだろう！！｣


｢異性として？うーん、まぁそうなるだろうな｣





｢······なら、なんで振るの｣

そう呟いた声はすぐに雨にかき消された。

今更振られた実感がわいてきて、ｽﾞｷｽﾞｷと胸が痛む。








本格的に鍛錬も始まる。

いい加減忘れなきゃ。




そう自分に言い聞かせて足を前に進める。




ちゃんと気持ちは伝えたしもう思い残す事はない。

後は吹っ切れるだけ。









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｢ここにいたか！探したぞ！！！｣


｢······｣






いつもそう。

心のどこかで会いたくないと思っている時、もう忘れようと決意した時に限って突然現れるんだ。




大きく息を吸って

ゆっくり振り返る。






｢炎柱様！｣

｢君の後ろ姿は小さくて堪らないな！！｣

｢······っ｣




雨の匂いが消えておひさまの匂いに変わる。

雨が止んだ···？いや違う。



｢……───｣



頭に羽織をかけてくれたんだ。

私が、濡れないように。





｢風邪を引いたら大変だ｣
そう言ってニコリと笑う炎柱様。


ぎゅっと抱きしめられて、心が揺れる。



｢······き、昨日はありがとうございました｣

｢うむ！具合は大丈夫か！｣

｢はい！私になにか御用ですか？｣

｢いや、用はない｣

｢······？｣






｢無性に君に会いたくなってしまってな｣

｢········｣






昨日振った人が何を言っているんだ。
本当に調子がいいんだから。



あの痕だってなんなんだ。ほんとやだ。



───なんて私の気持ちは炎柱様には一生通じない。



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