庭の金魚の波紋のその先 (ページ7)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:11,638 hit

3波ページ7

「噂は噂。俺が把握してる俺に関しての噂は、1部本当で、1部嘘だ。中等部や高等部の悪い先輩たちに絡まれてるのは本当。今回みたいに、家に帰れなくてフラフラしてたところを、声かけられてから絡まれるようになった。
その先輩たちと悪いことしてるって言うのは、その言葉の意味のままだと嘘。その先輩たちが万引きした食べ物を貰ってたから、広義的には本当。」

　さて、恐らく『Aに二度と近づくな』とか言って追い出されるのだろう。あぁ、今度はどこ行こうかな…。久々の布団、結構気持ちよかっ

「分かった。ちなみにアレルギーは？」
「………………は？」
「食べ物のアレルギー。料理番に言っておかないと、出されちゃうよ？食べ物は最悪、死ぬ場合もあるんだから、ちゃんと言っておかないと」

　いやいやいや、俺の話は聞いてましたか、と。俺の話を聞いたら、置いておくと言う判断は無いだろう。それとも何か？追い出すのは前提で、ただの興味本位でアレルギーの有無を聞いたのか？

「えっと、アレルギーは"エビ"です」
「ありゃ、それは死ぬ類のアレルギーだね。分かった、料理番に言っておく。それと、松村くんの部屋はさっきまで寝てた部屋で大丈夫そ？」
「なんで追い出さないの？！」

　やはり、この娘は俺をこのまま置いておく気だ！いやいやおかしいでしょ！

「先輩が盗んだやつ、注意もしなければ使ってんだよ？！そもそも、俺の言ってること、嘘かもしんねーじゃん！」
「じゃあ、私の話も嘘だと思った？」

　あまりにも。あまりにも綺麗に真っ直ぐ見つめてくるから、つい口を噤んでしまった。するともう一度『私の話は信じられない？私は拾われとか、皆も訳ありとか』と、告げてきた。

「おもわ、なかっ、た……」
「ふふ、私も。貴方の言ったことに、曇りは無かった。だから、信じた」

髙地は？と、隣に座る中等部の制服の人に話しかけた霞野さん。彼は1度目を伏せ、もう一度開く時は、それは優しく微笑んでくれた。

「なら、俺も信じるよ」

　こうして俺は、この天使、いや、聖母【霞野 A】のおかげで家に置いていただけることになった。
　そしてその日から、俺もAのためにこの命を捧げようと決めたのだった。