▼ ページ23
-現在-
「あれ?あそこに居るの北斗じゃない?」
昼休み。たまたま昇降口で体育帰りのAと落合い、教室まで送り届ける途中の出来事だった。ふっと廊下の窓に視線を向ければ隣接している中庭の隅にて、北斗と女の子が一緒に居る。ネクタイの色的に一年生っぽいし、何より雰囲気が告白そのものだ。
女の子は、それはもう誰が見ても分かるくらいに真っ赤で、一生懸命何かを北斗に伝えている。北斗はこちらに背を向けていて表情が分からないが、どうせ興味なさげにしているんだろうな。
さて、Aのアフターケアをどうしよっかな〜なんて軽く考えていれば、ガラッと思いっきり窓を開ける。え、まさか、
「ほくと!!」
「!……お!A!!ごめん、呼ばれたから行く」
「あ、あの!先輩!お返事は…!」
「あー、ごめん。君に興味ない」
バッサリ言い捨てたのはこちらに聞こえたため、思いっきりうわぁーなんて言いながらチラリと隣を伺えば、思っていたよりも涼しい顔をしていた。そこには、喜びも悲しみも無く、ただ淡々と北斗が来るのを待っていた。
「体育だったの?」
そう聞きながら窓枠越しに頬を撫でる。その行動にサッと頬を桃色に染め、可愛らしい女の子が微笑んだ。あれ?さっきまでの無表情な子はどこに行った?
それから二・三言葉を交わしクスクス笑ってから、待っててそっち行く、と反対側にある中庭の出入り口に向かって歩き始めた。おいおい、そっちにはまだ後輩ちゃんがいるぞ、と思ったところできっと北斗は気にしてないのだろうな。
すると突然、キュッとワイシャツを軽く引っ張られる感触がした。隣を見れば、さっきとはまた打って変わって怯えた様に正面を見据えている。視線を辿らなくても分かる。告白していた後輩ちゃんだろう。
しかし、それには気づかないフリして窓枠とAの間に立つ。
「ん?A、どした?」
「ほくと……、取られたくなくて…、それで、」
「うん。だいじょーぶだよ。Aの北斗だよ」
「ずっと?」
Aが不安げにこちらに確認をしてきたところで、ご本人が後ろから抱きしめた。
「ずっと。ずーっと、Aの北斗って昔約束したじゃん」
本人から言われ余計に安心したのだろう。くるりと振り返り可愛らしく返事をしながら抱き着いていた。
北斗はそれを、心底愛おしそうに抱き留めたのだった。
樹【しんたろ、お前のとこの――さん、監視対象ね】
たろ【りょ!】
57人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
甘味(プロフ) - 、さん» ご指摘ありがとうございます!すみません、外したつもりだったのですが、付いたままだったようです。気をつけます…。 (2020年8月22日 3時) (レス) id: 924e205136 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:抹茶餡蜜 | 作成日時:2020年8月22日 3時