庭の金魚の波紋のその先 (ページ18)

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朝。カーテンを思いっきり開ける音と、誰かの「起きろー」って声で、意識が浮上してくる。でも、もう少し寝たい私は窓とは反対の方を向きつつ、掛布団に潜る。
すると、起こしに来た人はベッドに腰掛け、優しく頭を撫でてくれてる。この起こし方は北斗だ！なら、もう少しだけ構ってもらおーってまだ寝たフリをする。

「A、起きて。遅刻しちゃうよ？」
「んー、ほくと？」
「ん。北斗だよ。全く、本当に朝が弱いんだから」
「ん～～、ねぇほくと？ギューってして？」

　これは流石にダメかな？なんて思いながら、なんだか今日は甘えたな気分で。
でも北斗も北斗で、凄くふにゃふにゃ笑いながら『しょーがないなー』って言ってギュッてしてくれたから、今日はとてもいい日だと確信。

「ふふ。甘い匂い」
「え、キツかった？」
「んーん。北斗の香水の匂い、すき」

　それから、北斗自身もすき。
おっと、これは言っちゃいけないやつ。危ない、危ない。
　いつも朝は、北斗に対してこれでもかって程甘えるが、そろそろ危なくなってきた気がする……。いつか、ポロッと言ってしまいそうで怖い。でも、甘えていたい。そんな葛藤を他所に、北斗は今日も優しく微笑んで、『先に行ってるから、着替えたらおいで』と言って北斗セレクトの私服を渡される。ズルいな…。ズルい。思わず去って行く背中に抱きつきたくなるのを我慢して、さっさと居間に合流すべくパパッと着替えた。

　今日は大我の引越しだから。