庭の金魚の波紋のその先 (ページ15)

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片手だったのが両手で頭を撫でてくるのに変わった。

「むぅ…、犬扱い」
「今の貴方は、完全に甘えてくる子犬ですよ？」
「わたし、人間だもん」
「はいはい。ふふ、Aは可愛い女の子ですよ～」

　その言葉にガバりと起き上がる。

「可愛い？私、可愛い？？」
「？…Aはいつでも可愛いよ」
「嫌いじゃない？」
「俺がAを嫌いになることなんて、絶対無いよ」
「ほんと？昼間、勝手に決めちゃったから…」

　『あぁ、なるほど…』なんて、ようやく私が何を言いたいか理解した北斗は、起き上がったわたしの頭をもう一度自分の腿に戻して、優しく丁寧に撫でてくれた。

「昼間は冷たい態度で怖がらせたね。ごめん。でも、お前の事が嫌いなんじゃないから、誰のことも嫌いなんじゃないから。だから、俺の事は気にせず、婚約者様の好感度をこの機会に上げておけ」

　北斗は知らない。あと1年ちょっとで婚約解消なのを。期限を決めた時は『解消したら北斗に告白する』なんて息巻いていたのに、実際年月を重ねる毎に、北斗は大我と私の前では遠慮をする。先の言葉もそう。
　北斗は大我との婚約を祝福してくれている。それは私の事を妹としてしか見てないから。

　今すぐにでも貴方が好きです、と言えたらどんなに楽か……。でも、言ったら困るのは分かってるから、今はもう少しだけ甘えさせてほしい。