庭の金魚の波紋のその先 (ページ2)

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随分長くここに居たのか、初等部の制服はだいぶ水分を含み重そうだし、隣に置いてあるお揃いの黒のランドセルはピカピカで物持ちの良さが伺えるが、それ故に雑草と共存している電柱とのコントラストに目がくらむ。

「ねぇ、だいじょうぶ？」

　そう声をかけても、ピクリとも動かない。
ちょっとまずいな。前に本で読んだことがある。人は寒い中で寝ると……、死ぬ！
今は、別にめちゃめちゃ寒い訳では無いが、まぁ、雨降ってるからずっと当たってれば寒いし、人によっては今既に肌寒いと感じる人もいるだろう。
え？まずくない？？

「ねぇ、起きて。死んじゃうよ。ねぇ。ねぇ。」

　声をかけながら、ユサユサと揺すれば顔をあげて閉じていた目を開かせた。良かった、意識が戻った。

「おにーさん、歩ける？家、どこ？」

　いや、でも歩けたとしても家まで辿り着けるのか？
幸いにも、ここは我が家の角だ。少し歩けばウチの門がある。少し休んで貰ってからでも遅くないな。
家に上がって休むよう進言しようとした所で、おにーさんが口をひらいた。

「歩ける。けど、家は……」

なるほど。訳ありだ。我が家は訳ありの人ばかりだから、別に驚くことじゃなかった。なら、余計に我が家に連れて帰ろうとしか思えなかった。
　しかし、それには貴臣さんに報告しないといけないし、報告するには情報が少ない。

「おにーさん、家に帰れないの？それとも帰りたくないの？」
「家に、帰れない。し、帰りたくない、かな」
「お父さんとお母さんはいる？」
「いる。けど、連絡はしないで」
「うん。大丈夫、しないよ。両親はいる。けど帰れないし、帰りたくない。よし！じゃあ、おにーさん！我が家に行こ。すぐそこなんだ」

　は？と、戸惑っている間に手を取り引っ張る。
1分もしないうちに門前に到着。センサーで自動で開く門を潜れば、すぐに家から出てくる人影。

「A！もう、遅いよ！しんぱい、って、え？！」