あのトキ一瞬で… 【紫】vol.3 (ページ24)

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部屋の前、携帯を耳に当てながら息をひそめる

聞こえてくる話の内容は、私の予想と反するものばかりで

彼の口から“私と出会ったのは運命なんじゃないか”とか

“私しかいない”とか

そんな言葉が出てくるなんて思ってなかったし

メンバーさんが全員、私の事を受け入れてくれるなんて、想像もしていなかったから

嬉しさのあまり、こぼれ落ちる涙が止められない

“もしもし？…”

聞こえてきたその声が優しすぎて

「……っ、うっ…ん」

上手く返事出来ないでいると

“何で泣いてるん？あっ、ひとり外に残されて拗ねてたんかぁ？”

今度は耳が痛くなるような大音量

「…うるざい…」

大泣きした後の鼻づまりな声で答えると

“そない泣いたんなら、顔大変な事になってんで？はい、鏡出して。ちゃんと見たか？直すとこチャチャっと直しせよ。あぁ、鼻もちゃんとかめよ？”

そんな事、そんな大きな声で言わなくても…と思いつつ、言われた通りに鏡を出す

仕事仕様の薄いメイク。涙の跡が幾筋もついている顔にファンデーションだけ塗っていたら

“俺は、泣き腫らしたブッサイクな顔でも……
好きやねんけどな…”

その、言い方っ。照れ隠しなのかブツブツ聞こえるそんな言葉も

「…ありがとぅ」

今はうれしい

“ええか？ほしたら襖開けんで？”

「……うん」

認めてもらったとはいえ、メンバーさんとの再会は緊張する

スーッと襖が開いて

「ほれ、入り」

差し出された彼の大きな手

「いい…の？」

「ええに決まっとるやろ？さっきの聞いとったか？」

今日、何度掴まれたかわからない手首グイッと引かれて

「うわっ」

バランスを崩して倒れそうになった

「あぶなっ」

そんな私を抱きかかえてくれたのは村上さんで

「うわぁっ！」

慌ててその胸から飛び退いた

「なんやねんっ。イヤなんかい！」

「そっ、そうじゃないけど…」

恥ずかしいじゃない

この人はわかってるのだろうか。自分の後ろにジーっとこちらの様子を伺う6人がいる事を…

「そうやないんやってぇ」

大倉さんなんて、ニヤニヤしながらあんなこと言ってるし

「え～っと…まっ、いいじゃないですか、その話は…」

オドオドしている私を見下ろしながら、またププッと隣で笑うから、何だか悔しくなって彼の肩を思い切り叩いた

「いったぁー！！」