わたしとわんこ #01

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帰宅してからしまいっぱなしだった写真を取り出す。

安井とのツーショットの1枚と私が作ったラテアートと樹くんの写真。
もう1枚は私が描いた被写体の樹くんだった。
その裏にはびっしりと字が並んでいた。


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南先輩へ

いつもいつも付きまとってごめんなさい。
先輩のやさしさを勘違いしてたくさん迷惑かけました。

蘭学に入ってすぐ先輩を廊下で見かけました。
俺のひとめぼれです。
一方的な気持ちを押し付けてごめんなさい。

先輩のわんこは最後にします。
すごく楽しかったです。
ありがとうございました。

1B 田中樹

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好きだと言ってくれたキモチはこれよりもずっと痛い。
ずっとずっとのらりくらりと交わされてきたキモチに比べたらこんなの痛くもない。

樹くんを好きな幼馴染の彼女に比べたら全然痛くない。
でもすっごく苦しくて辛くて痛いよ…樹くん。

もう遅いって言われてしまえば、それまでだって思った。
安井が言ってた“樹の気持ち”はきっと今の私と同じだと思う。

誰かに聞いてほしくって時間を見るとまだ15時。
まどちゃんに話聞いてもらおうとLINEを立ち上げる。


今って忙しい?
まどか渡辺と映画観てくる
そっか!楽しんできてね!
まどか渡辺のバカ寝坊してこんな時間だけどね。
いつも通りだね。いってらっしゃい
まどかなんかあった?
テストも終わったしお茶しようかなって思っただけ
まどかなんかあるなら渡辺断るよ。
大丈夫だよ、ありがとね


休みの日にこうやって突然会おうなんて言わないから…気にしてるかな。
心配しないでのキモチを込めて比較的明るいスタンプを押す。

するとまどちゃんからも同じキャラクターのスタンプが返ってきてLINEを閉じた。
机に出したままだった写真をしまってるとプリンのカップが目に入る。


「プリンの感想も伝えてなかったんだっけ…。」


文化祭2日目にもらったプリンは帰ってきてすぐにお皿に出して食べた。
お母さんに捨てられそうになったカップの中にビー玉をいれてる。

そのカップも見ることすらつらくて、そっと引き出しにしまう。

なにを間違ったのか考えても樹くんと出会ったあの日から私が間違っていたんだ。

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