わたしとわんこ #01

※ ページ41

「えっ…」


言葉を失うっていうのはこういうこと。
人生で初めての衝撃で、心の奥からぐっとこみあげてくる。

目の前にはあの日萩谷くんが見せてくれた写真。
その横には“金賞”の文字。

自分でも驚くほど穏やかな表情の自分の横顔。


作品名：佳麗
作 者：晴蘭学園 写真部1年 萩谷慧吾
被写体：晴蘭学園 美術部2年 南A
解 説：何気ない日常に愛おしさは溢れています。
　 それはきっと意図しない時にこそ表情に現れるんだと思います。
　 愛おしいという気持ちが溢れる横顔にそっとシャッターを切りました。


大きなパネルに目いっぱい広げられた見知った横顔。
自然と涙があふれて、止まってはくれなかった。


“樹にどうして気を持たせたりするんですか”


彼女が言った言葉が頭の中を支配している。
気づくのが遅かったんじゃなくて、遅すぎた。

樹くんがくれる“好き”を受け止めなかった。

それでもいつもくれた笑顔。
その笑顔は“好きだから”こその笑顔だったんだ。

口にしてくれたのに。
好きですって面と向かって言ってくれたのに。

真剣に考えなかった。
これは安井が言ったように私への罰なんだ。


「目は口程に物を言うっていうからね。」


私の肩をぽんとして真田くんは後ろを通りすぎた。
それからしばらくそこから離れることができなかった。

いやってほど出てくる樹くんのいろんな表情。
たくさん見てきたくせに、向き合わなかった自分が情けない。


ごめんね、樹くん。

こんな先輩で本当にごめんなさい。

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