扉の先に【募集企画小説】 (ページ26)

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27話『真裏帆理』ページ26

ナレ果の叫び声に体が竦む。
怖くて涙が浮かんだ。
どうすればいいか分からずに服の裾を握る。

「帆理、くん。何かえいって出来そうな物持ってないかい？あの…なんて言うのかな？取り敢えずえいって出来そうなの」

するとルークさんから声をかけられた。
えいって、出来るもの？
えいっ…そう考えながらふとポケットに触れる。

「あっ、カッターあります…！」

ポケットを探ってカッターを取り出す。
忘れてた、これだってえいって出来るやつだった。
しかし、問題がひとつ。
ルークさんがカッターを知らなかった。

今は説明をしている時間も惜しいのに…。

俺がやるしか、ないのか？
刃を出して構える。
恐怖が消えない。なんで、やらないといけないのに。
カタカタと震える手を抑えるようにギュッと目を瞑る。

息をついて、切りかかろうとしたその時
手元からカッターが消えていた。

「えっ…？ぁ、れ？」

混乱して顔を上げると俺のカッターを振るうルークさんがいた。
思わず見蕩れる。その間にもルークさんはナレ果を片付けていた。
パチパチと拍手をしながら声を上げる。
するとまたもやルークさんは僕を褒めた

やっぱりよく分からなくて、おかしな表情をしてしまう。
自分の感情がわからなくてそれを隠すように話を変える。どっちにしても、コレをどうにかしないといけないから。

転がるナレ果に近づき、短刀を取り出して刺す。
刺した拍子に血のようなものが零れた。

「ぁぅっ…うぅ、ごめんなさいっ…ごめ、ごめんなさ、ッ」

申し訳なくて、泣くのを我慢して謝る。
小さく痙攣して動かなくなったナレ果を小さく見やり、短刀をしまう。
頭を撫でてくれる手に、安心した。

「っ、ぁ、主様…行きましょう…？」

「あぁ、そうだな」

立ち上がり歩き始める。
たが、一難去ってまた一難。
俺は忘れていた。

「あの…ここ、どこでしょう…？」

自分がどうしようもない極度の方向音痴であることを。

「ご、ごめんなさいぃぃっ」