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市場は広くて、Aを見つけるのに少し苦労した。
ソフトクリーム屋さんに並んでいるAを見つけて肩をちょんと叩いた。
重岡「A」
「あれ、どうしたの」
重岡「オカンが行けって」
「そっか」
重岡「でもほら見て。」
俺は手のひらを広げてお金を見せた。
重岡「俺らの分も買おうぜ」
「ええの？」
俺は頷いた。
「なんか、悪い顔してるで大毅」
久しぶりにAに名前で呼ばれて少し心臓の鼓動が早くなる。
ファンの人とかメンバーにはいつも”シゲ”って言われるから。
名前で呼ばれることが懐かしくて、心がくすぐったい。
重岡「買お買お」
俺らの番になり
Aは俺からお金を受け取った。
少し触れた手にまたキュンとする。
「金箔ソフト３つください」
そう言ってAが２つ受け取り
俺が１つ受け取って満足。
よし、車に戻ろう。
その時。
「あの…重岡くんですか？」
重岡「あ、はい」
「わ、本物や…。
あの、握手いいですか？」
重岡「あ、いいですよ」
ファンらしき高校生が５人。
制服姿で俺の周りに集まってきた。
一人一人に握手すると、嬉しそうに照れる高校生たち。
素直に嬉しい。金沢にファンがおるなんて。
普段関西で活動しているからこそ、レアすぎるファンとの遭遇に俺も笑う。
「私、重岡くんのえくぼが好きなんです、見せていただけませんか？」
重岡「あ、ええですよ〜」
笑うとキャーと叫んでくれる高校生。
悪い気せえへんな。
高校生が嵐のように去っていくと、
重岡「ソフトクリーム溶けてるやん」
俺は慌てて口の中に入れた。
周りを見ると、Aがおらん。
あれ。
高校生の相手をしているうちにいなくなった。
慌てて俺は車に戻った。
重岡「オカン、Aがおらん！
…て、あれ？」
後部座席に、Aがおった。
Aとオカンは2人で美味しそうに金箔ソフトを頬張っていた。
「ごめん、先に戻っちゃった」
重岡「いや、ええけど。
おってよかった」
そのAの顔は、悲しそうやった。
なんかあったんかな。
そう思ったのもつかの間。
「金箔の味、せえへんな」
そう言って俺に向かって笑った。
なんや
気のせいか。
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作者名：きい
| 作成日時：2021年1月8日 0時
