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「私だけ、もう一周したんよ」




重岡「え、そうなん?」





「だから、一回分お得やった」









あの時、女性のスタッフさん1人では抱えきれなくて、もう一周してる間に応援を頼んで






それでやっと、Aを降ろしたらしい。







重岡「それは、ほんまに申し訳ない…」




「ええよ、そんな昔のこと。」






重岡「それと、あの時ひどいこと言うてごめん」






”見損なった”って。




思ってもないくせに、そんな言葉を言ってしまったこと。





「それも、昔の話やから。」








Aは、奥からお皿を出して、俺の前においた。





「ここのおすすめメニューです。





フレンチトースト。





召し上がれ」



重岡「あ、ありがとう」






Aの作ったフレンチトーストは、めちゃめちゃうまい。







「私も、ごめん」





いつの間にか、カウンター席に座るA。




横顔のAも相変わらず美しい。







重岡「何が」



「…私も、ただの幼馴染って思ったことないのに。






成人式で久しぶりに会った女の子に言ってしまって。





大毅、傷ついたよね」







傷ついた。









今思えば、別れる原因はあの女子の”シゲはジャニーズやから”の言葉。







「あの一年間は、一度も忘れたことない。





私の宝物。」








そう言うAは、俺の方を向いて笑った。








「ジャニーズと付き合ったらあかん。




そんなことを心の奥底に




何重にも鍵をかけて眠らせて






大毅と一緒におって




一番楽しかった一年間やった。」






そう言って遠い過去のことのように微笑むA。









重岡「…俺だけかな」




「…何が?」



重岡「未練タラタラなのは」

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作者名:きい | 作成日時:2021年1月8日 0時

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