【赤】ハートに火をつけて (ページ1)

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夢(過去) ページ1

Aとは物心ついた時から一緒に行動していた。

産まれた病院も同じで、母親同士が仲よかった。

そして近所であることから、家族ぐるみで旅行したり遊んだりするようになった。

Aは素直でホンマにええ子。

口数が少なくて、小学校の時は友達があまり多くなかった。

中休みや昼休みは校庭に行かず、1人図書室で本を読む子やった。

特に嫌われているというわけでもないし

本人もその方が気を使わなくていいようだった。

だから、Aと仲が良いのは俺で、俺しかいなかったと言っても過言ではない。

根が暗いわけやない。

友達に声をかけられたら笑顔で対応できるし

宿題も忘れずにやってくる。

成績も上位。

だけど、鼻につくわけではなく

成績や頭の良さで人を区別するような人でもない。

成績があまりに悪くて親に怒られた時、Aは俺にこう言った。

「大毅なら、大丈夫やで

きっとうまくいくから。

笑って。」

何が大丈夫なのか。

何がうまくいくのか。

何の根拠もないその励ましが

なぜか俺の心をいつも落ち着かせてくれた。

いつしか俺は、Aのことが好きになっていって。

Aの喜ぶ顔をもっともっと見たくなった。

「大毅の喜ぶ顔を見ると、

なんでやろ。私も元気になる。」

そんなことを言ってくれるAが愛おしくて愛おしくてたまらなかった。

小学生の頃から、Aは少し大人びていて、俺よりも身長が高かった。

俺との仲は中学一年生の時も変わらず

一緒に登下校をしていた。

お前ら付き合ってんちゃうかって言われてもおかしくないくらい一緒にいたし

実際に言われたこともある。

言いにくいからか、Aにそう聞く人はいなかったけれど

俺にそう聞く男子はいっぱいいた。

俺はそんな立場を利用して

重岡「どうやろ～、秘密～」

そうおちゃらけていた。

そう言っている俺のことをAは、端っこの席で微笑んで見守ってくれていた。

俺と、同じ気持ちなのかな

なんて

その時はうぬぼれていた。

それは、ぬか喜びってやつやったんやな、A。