12[T.K] ページ12
「あの子、浮いてるで。気づいてる？」
「え……？」
「あの日を境に、みんながAは耳が聞こえにくいって分かって。
それからやっぱり気にしちゃうやん。みんなも、Aも。
Aは不安やねん。自分の耳のことみんなが揶揄してるんちゃうかって。
朝教室来て、教室を一旦見渡すねん。
みんなの口元見てる。
みんなは普通に世間話を喋ってるだけやけど、
Aは自分が教室に入ったことで自分の噂をしてるんちゃうかって不安に襲われてんで。
そんで、聞こえへんからもっと心の中では黒い渦の中に足を引っ張られ続けてる気分になってんねん。
終わりのないスパイラル。あの日以来、Aから笑顔消えた。
みんなも気使って話しかけんようになってもうてん。
孤立してる。みんな何も言えへん。
私も話しかけてるけど、Aは謝るばかりやねん。筆談でごめんねって。時間かかってごめんねって。
全然気にしてへんよって私は言ってるけど、Aが気にしてんねん。」
「………。」
「正直、私もどうしたらいいかわからへん。
Aに積極的に話しかけることが一番の治療薬とは思ってるけど…。
Aが元気なくなるのを見てると辛いねん。
元気だったあの頃を知ってるから。神山くん。」
「…ん？」
「もっと…そばにいてくれへんかな。」
「…なるべくそうするよ。菊池、いつもありがとうな」
教室内でのAの様子は知る由もなかったから、
こうして菊池に教えてもらえるだけでもありがたかった。
それを知っていたのにも関わらず俺は……。
事務所での仕事が忙しくなりつつ、
ライブコンサートのための振り付けを覚えたり合わせたりで
日曜日もあまりAと一緒に居れる時間は日に日になくなっていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 622人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きい
| 作成日時：2021年10月17日 19時
