エピローグ3/6 ページ44
「あと2つは?」
「車。」
「……駄目だ。」
途端に降谷は真顔に変わる。
一瞬の沈黙の間、降谷の視線が左上を彷徨ったのをAは見逃さない。
降谷の脳裏に過ぎったのは過去のAか、はたまたGT-Rか。
「…もう普通に運転出来ます。」
「今まで車持ってなかったんだろ?
それで困ってないなら今まで通りで良いだろ。」
「それは違反で捕まったらマズイからで…まぁ、とりあえず一旦引き下がります。」
「そうしてくれ。」
ほんの少しだけ開けられた窓から入り込む風が、降谷の髪を揺らした。
遊ぶ様に揺れたそれは、まるで猫じゃらしの様で。
Aは再び降谷に抱きついた。
「会わない間に随分甘えたになったな。」
「今日くらいは良いかなって。
…嫌?」
「嫌なわけないだろ。」
Aが側にいるという実感と共に出て来た余裕からか、今度は優しく抱きしめる。
「あー……」
「ん?」
(あー可愛い……)
「幸せだ…。」
「今日はここに泊まる。」
「え?いや、これから退院…」
「もう退院なんですけど」
Aの言葉を遮る様に、ガラリとドアが開いた。
そこには、白衣を纏う外科医が居た。
退室を促しに来ただけで無駄話をするつもりはないのか、それ以上足を進めずその場で外科医は早口で告げた。
「アンタがもしこの先…何か問題でも起こして、”やっぱりあの時助けるべきではなかった”と俺が糾弾されるような事があった時は、…いや、”やっぱあん時そのまま殺しときゃ良かった”って少しでも俺に思わせたその時は、容赦なく慰謝料を貰いに行きますんでそのつもりで。」
終始無愛想だった担当医なりの、お見舞いの言葉だろうかとAは思った。
(でも本当に来そうだなー…)
「色々あったって研修医の方と看護師さんが話してるの聞こえました。
助けて貰っといてあれですけど、どうして…」
外科医は舌打ちの後、鼻で笑った。
「アンタらの、その信念とやらと大して変わんないよ。
患者がいる、それを助ける、以上。」
「……」
「10分後にまた迎えに来ますんで、荷物まとめといて下さい。」
A達の返事も聞かず、彼は部屋を出て行った。
「…松田みたいな人だったね。」
「松田より相当曲者だろう、あれは。」
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虎鉄(プロフ) - まみこさん» まみこ様、私こそ深夜にすみません!こちらにまで涙。一気読み+コメントする時間まで割いて下さり本当に有難うございます!松田氏なりに降谷氏とは違う道を進むのでお付き合い下されば嬉しいです。大切に書いた話なのでそう言って頂けて感無量です。 (2022年7月24日 0時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 応援してます!!本当にこの作品は神です!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - こんばんは!!真夜中にすみません💦一気読みしました!マジで感動しました!!あー、夢主ちゃん良かったね!!と、保護者のような気持ちで読んでましたねw松田さんのほうも読んでます、頑張ってくださいね!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(消えた捜査官松田ver作成中)(プロフ) - ひゆめさん» ひゆめ様、一気読みのお時間頂戴しまして……!かつコメントまで下さり本当に有難う御座います。クロサギ懐かしいですよね(^^)当時は全く意味分からんまま見てましたが笑。読んで下さってありがとうございました(^^)!2と合わせての返信で失礼します。 (2022年6月12日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
ひゆめ(プロフ) - 同じく一気読みしました!!クロサギ懐かしいと思いながら進めていたら凄く惹き込まれました。とても面白かったです。 (2022年6月12日 0時) (レス) @page50 id: 141a54d8d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月2日 0時