【名探偵コナン】消えた捜査官5【降谷零】

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TVに映し出された光景は、降谷を唖然とさせた。

「一体…これは…っ」

そこには、街頭で何かを手に、何かを訴えかける大勢の人々の姿が映し出されていた。
その光景を興奮した様に実況するリポーターの声は、もはや降谷の耳には届かない。

広範囲に広がる人々の姿を、カメラがぐるりと映し出す。
その中で1人。
人々の先頭を切る様に、一際大きな声で何かを叫び続ける1人の男を、カメラはアップで映し出す。

「この男…」

降谷には見覚えがあった。

「この男…、あの工場の…」

そこには、いつか降谷が訪れた工場の工場長”松村圭佑”の姿があった。



「情報元はまだ特定出来ていないそうですが、マスコミ各社に今まで表には出ていない今回の事件や鮫島達の過去の隠蔽に関する大量の情報がリークされて、瞬く間に拡散されています。」

風見の言葉を聞きながらも、降谷はTVに映る人々から目を離す事は出来なかった。


「改めてこの事件の真相を知った日本国民が、彼女の減刑を求めて嘆願書の署名運動を始めている模様です。
署名運動の先頭に立っているのは…
今回…綾瀬Aを調べるにあたり
我々が目にした顔と名前ばかりです…っ‼」

風見の声が、震えている気がした。
降谷は、先頭に立つ松村しか知らない。
しかし、順々に映し出される杖をつくこの老人も、気弱そうな男性も、小さな子供を抱えるこの母親も、


「…綾瀬Aに助けられた詐欺被害者達が、今度は綾瀬Aを助けようと必死に動いています…っ‼」



『あの…‼彼女は、何か罪に問われるんでしょうか…』

[署名をお願いします！]
[私達は彼女に助けられたんです‼]
[このまま彼女1人に責任を負わせてしまっては…この国は何も変われない‼]
[彼女の正義を否定してはいけない‼]
[この国のこれからの未来の為に‼]
[署名にご協力お願い致します！]
[お願いします…っ‼]





A

お前にこの光景を見せてやりたい。

大の大人が、必死に声を張り上げてお前を救おうとしてる。
お前が救おうとした、この国の未来の中に、A、お前もちゃんと居るんだよ。

『俺にはもうあいつを繋ぎ止める事は出来ん。』

『俺だって…止められるものなら、止めたかったさ。』

必死に声を張り上げる人々
足を止め聞き入る者
筆を取る大勢の人々
無力な自分に拳を握り締める警察官たち

A

お前の幸せをこんなに沢山の人間が願ってる。

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