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満月を雲が覆い隠す。
ー19:53ー
降谷も迷わず「R」を選択し、屋上を目指す。
何十秒か上昇して、エレベーターの扉は開いた。
目の前にある屋上へ続くドアには、本来立ち入り禁止で施錠されている筈が、されている気配はなかった。
降谷がピッキングするまでもなくドアノブを右に回せばそれはいとも簡単に開いた。
薄暗い月明かりに照らされ、夜を従える様にAが淵に立っていた。
高層マンションは火災時、屋上からの避難も想定されている為、ヘリの妨げとなる様なフェンスは設置されてはいない。
「…A」
Aがゆっくりと振り返った。
背後の月明かりのせいで顔に影が差し、その表情は読めない。
「…聞きたい事は山程ある。
けど、まず…
Aが生きててくれた、それだけで充分だ。」
「……」
降谷の口はスラスラと言葉を紡いだ。
「お前は、あのメールを読んでないんだよな?
あんなもの、一生読まなくて良い。」
Aは何も答えない。
「俺の気持ちは…今でもあの頃とは何一つ変わってない。
今でも、あの頃に戻りたい。」
そんなの嘘だ。
俺は、過去の俺にだってAを渡したくはない。
過去の自分にだって負けたくない。
俺はAと今を生きたいんだ。
「お前が詐欺師だとか、俺が警察官だとかそんな事はどうだって良い。」
「……」
「また、あの頃の様に一緒に笑い合いたい。
ただそれだけなんだ。
だから頼む。
復讐なんてバカな考えは捨てて、これからずっと一緒に居よう。」
キュラソーとの取引があった事を知っているとは悟られてはならない。
本当は
伝えたい事が山程あったはずなのに
俺がしたかった未来の話は
こんな陳腐な、偽物の言葉ではなかったのに
「俺の為に、止まってくれ。」
出てくるのは
お前を引き留めようとする
卑怯な言葉ばかりだ
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虎鉄(DC一時お休み中)(プロフ) - スカイさん» スカイ様、返信遅れて申し訳ありません!コメント下さり有り難う御座います(^^)スカイ様の涙腺を刺激出来たなら本望です笑。御礼を言うのはこちらの方です。短くはないこの作品を読んで下さり、そして感想まで下さり本当にありがとうございました!!感謝です。 (2020年6月20日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - すごく感動しました。涙が溢れてきて胸がキューとなってこんな素晴らしい作品を作ってくださりありがとうございます (2020年6月13日 2時) (レス) id: 8bcf366f5d (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - しろさん» なんと嬉しいお言葉でしょうか。自己満足の小説に、その様なコメント頂けて嬉しいと感謝の他に言葉が見つかりません。落胆されぬ様にこれからも執筆させて頂きます!これからもよろしくお願いします。ありがとうございます! (2018年5月30日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 初めての感覚です。何か映画や連ドラを見てる気分でした。心の底から応援してます!!こんなに引き込まれるのは初めてです!!!! (2018年5月30日 18時) (レス) id: fe2831d1b4 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - KAZUKIさん» コメントありがとうございます!身に余るお言葉…そう言って頂けて本当に嬉しいです。10枚以上書き連ねたプロットが報われる様な気がします。話が重く複雑なので悩む事もありましたが、書いてきて良かったです。もうすぐ佳境です、引き続きよろしくお願い致します★ (2018年5月30日 0時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年5月20日 15時