検索窓
今日:9 hit、昨日:93 hit、合計:435,914 hit

151 ページ34

「……ん…っ」

未だ嘗てない程に重たい瞼を開けると、目に飛び込んだのは白い天井などではなかった。
視界に広がる打ちっ放しのコンクリートは、目覚めたばかりの頭でさえ、自室でも病院でもないと理解した。

身体は動きそうもなく、仕方なしに顔だけを横に向けると粗末なテーブルの上には花瓶と赤い花が一輪。
その赤を視界に入れた時、Aの脳裏には信じられない光景が浮かんだ。

「お母さんが…っ、…血だらけで…
お父さんが…包丁を…」

あまりにも強いショックに、Aの記憶は混濁していた。

「起きたか。」

「…誰、ですか。」

「…お前の仇だ。」

「…かたき?」

気配もなく部屋の中に居た男は、自らを桂木と名乗った。

「お前の家族はお前以外全員死んだ。
犯人はお前の記憶の通りだ。」

Aは、桂木の言っている意味がまるで分からなかった。
桂木は、Aの言葉を待った。

「…お父さん、が…?」

一瞬だけ目を伏せた桂木は、すぐに表情を無に戻す。

「お前の父親は詐欺師に騙され、一家心中の道を選んだ。」

「詐欺…、心中…」

「その詐欺のプランを立てたのは俺だ。」

「…え?」

抑揚なく告げられたその言葉はあまりにも衝撃的で、怒りで目の前の男がグニャリと歪んで見えた。

「俺を殺したきゃ殺せ。
けどな。
お前の父を手に掛けた実行犯の正体は、俺を殺す位じゃ口を割らんぞ。」



それは悪魔の様な一言だった。

これから続く孤独な道の始まりを、赤い彼岸花は見ていた。

152→←150 -第5章- Lose-追憶編-



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (301 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
581人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

虎鉄(DC一時お休み中)(プロフ) - スカイさん» スカイ様、返信遅れて申し訳ありません!コメント下さり有り難う御座います(^^)スカイ様の涙腺を刺激出来たなら本望です笑。御礼を言うのはこちらの方です。短くはないこの作品を読んで下さり、そして感想まで下さり本当にありがとうございました!!感謝です。 (2020年6月20日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - すごく感動しました。涙が溢れてきて胸がキューとなってこんな素晴らしい作品を作ってくださりありがとうございます (2020年6月13日 2時) (レス) id: 8bcf366f5d (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - しろさん» なんと嬉しいお言葉でしょうか。自己満足の小説に、その様なコメント頂けて嬉しいと感謝の他に言葉が見つかりません。落胆されぬ様にこれからも執筆させて頂きます!これからもよろしくお願いします。ありがとうございます! (2018年5月30日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 初めての感覚です。何か映画や連ドラを見てる気分でした。心の底から応援してます!!こんなに引き込まれるのは初めてです!!!! (2018年5月30日 18時) (レス) id: fe2831d1b4 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - KAZUKIさん» コメントありがとうございます!身に余るお言葉…そう言って頂けて本当に嬉しいです。10枚以上書き連ねたプロットが報われる様な気がします。話が重く複雑なので悩む事もありましたが、書いてきて良かったです。もうすぐ佳境です、引き続きよろしくお願い致します★ (2018年5月30日 0時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年5月20日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。