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「一目惚れだったんだ…俺の。」
安室の一人称が「僕」から「俺」に変わった。
コナンの視線が恥ずかしくなったのか、降谷は向かい合うに立っていたカウンターを抜け、カウンターに座るコナンの2つ隣に腰を下ろした。
「ゼロの兄ちゃんの?…意外。」
「俺だって、当時はただの高校生さ。
まぁ一目惚れだったって気付いたのは大分後だったけどね。」
「ゼロの兄ちゃんってきっとそれまでフラれた事なんてなかったでしょ。
あと多分、自分から好きになった事も。」
「……。」
「嘘はつかないでね。」
「…まぁね。」
「悔しかったの?Aさんにフラれて。」
「…それはちょっと違うかな。
悔しいとかの話ではなくて…なんて言ったら良いんだろう。
自分以外に、彼女の隣に相応しい男なんてこの世にいて欲しくないって思ったんだよ。」
降谷らしい、とコナンは思った。
工藤新一にも、その感情には覚えがある。
コナンは、降谷が椅子を挟んで隣に座った為、表情を確認する事は出来ないが、その声色は今までコナンが聞いたことのない程に優しいものだった。
「行き詰まってた俺の前に、突然現れて颯爽と去ってったんだよ。
初めは、何も知らない癖にって苛立ちもしたんだけど、その考えはすぐになくなった。
努力する彼女の後ろ姿を見た時に、彼女の横を、手を取って堂々と一緒に歩きたいって思ったんだ。
今思えば…あの時から、俺の世界は確実に変わったんだよ。
Aが、俺の人生に色をくれた。」
「どれ位の間、頑張ったの?」
当時を思い出しているのか、降谷は苦笑いを浮かべながら答える。
「どれ位だろうね。
とにかく必死だったよ。
振り向いて貰おうと、今思えばこっぱずかしい事だって何でもしたな…。
結果的に付き合える事になったから、俺にとって必死だったそれまでの時間も、かけがえの無い大切な時間さ。」
「こっぱずかしい事ってなーに?」
「それは黙秘するよ。」
「ふーん…
じゃあ…付き合えた時、嬉しかった?」
コナンの問いに、降谷は目を閉じた。
「Aと付き合えた時…
あの時の俺は世界で一番幸せだったって断言出来るよ。
それからも、柄にもなくデートコースを下見したり、スマートな男に見られようととにかく必死だったな。」
目を閉じれば、あの日のAが笑っている。
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虎鉄(DC一時お休み中)(プロフ) - スカイさん» スカイ様、返信遅れて申し訳ありません!コメント下さり有り難う御座います(^^)スカイ様の涙腺を刺激出来たなら本望です笑。御礼を言うのはこちらの方です。短くはないこの作品を読んで下さり、そして感想まで下さり本当にありがとうございました!!感謝です。 (2020年6月20日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - すごく感動しました。涙が溢れてきて胸がキューとなってこんな素晴らしい作品を作ってくださりありがとうございます (2020年6月13日 2時) (レス) id: 8bcf366f5d (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - しろさん» なんと嬉しいお言葉でしょうか。自己満足の小説に、その様なコメント頂けて嬉しいと感謝の他に言葉が見つかりません。落胆されぬ様にこれからも執筆させて頂きます!これからもよろしくお願いします。ありがとうございます! (2018年5月30日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 初めての感覚です。何か映画や連ドラを見てる気分でした。心の底から応援してます!!こんなに引き込まれるのは初めてです!!!! (2018年5月30日 18時) (レス) id: fe2831d1b4 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - KAZUKIさん» コメントありがとうございます!身に余るお言葉…そう言って頂けて本当に嬉しいです。10枚以上書き連ねたプロットが報われる様な気がします。話が重く複雑なので悩む事もありましたが、書いてきて良かったです。もうすぐ佳境です、引き続きよろしくお願い致します★ (2018年5月30日 0時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年5月20日 15時