【名探偵コナン】笑って、マイヒーロー【紺.青.の.拳】

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『え？ 京極さんが試合棄権って、』
　
　選手控え室の前に居た人に詳細を聞けば、集合時間になっても京極さんが現れず、後に入った電話連絡で彼自身が試合を棄権すると切り出したのだとか。
　強者と闘いたいと言っていた言葉は嘘じゃなかったとなれば、昨日の件が彼の行動を変えたということになるのだろうか。
　友人の雄姿が見れないとなれば気落ちしてしまうのも、はやり気になるのは彼のメンタル面だ。園子の言葉は時折、切り口が鋭い時がある。その切っ先が彼に深く突き刺さっていなければいいけれど。
　
『やばっ、試合が始まる！』
　
　館内に流れたアナウンスによって試合開始が知らされることになる。
　不戦勝があるとなれば予定より早く進行することになるだろう。
　優勝候補と言われている彼の一人相撲になるのだろうか。空手のルールはあんまり知らないけれど、チェンさんが丁寧に教えてくれるに違いない。
　小走りで駆ける私の背後を、誰かに見られているなんて気付く由もなかった。
　
「……っと、優勝は彼のようデスネ」
『流石ですね。圧巻でした』
　
　チェンさんとの観戦の末、優勝者はレオンさんの部下だ。そして彼には“紺青の拳”がはめ込まれたチャンピオンベルトが彼に贈呈される。
　会場内の熱気と歓声がピークに達する中、優勝した彼が何処となく浮かない表情を浮かべていることに気付くのだった。その理由を考える前にも大会は終了を告げられ、熱気冷め止まぬまま観客たちは次々と退席していく。地元の報道陣たちが彼を囲うのを視界に納めつつ、私は近づいてきた“彼”に緊張を覚えてしまった。
　
「シンガポールの空手はどうでしたか？ A嬢」
『観客の熱気と選手の熱気が混ざる、最高の場所でした。お誘い頂いたチェンさんにも、そして、今回一番の武勇を見せたヘッズリ・ジャマルッディンさんにも感謝したいですね』
　
　平然を装いながらも心臓は嫌な音を立てる。キッドとのやり取りで少しだけ和らいだ恐怖が彼を前にするとむくむくと蘇ってくるのだ。
　２度も“紺青の拳”を狙ったキッドを退けさせたレオンさん。２度目は殺人事件の件もあったと聞いたが、それでも彼の手腕は認めざるを得ないだろう。
　
「聞けば、明日にでもシンガポールをたってしまわれるのだとか。どうでしょう、今夜一緒にご夕食でも。貴女に見て頂きたい景色があるのですよ」
『(景色？ ショーのことかな？)』
　
　
　

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