華麗なる奇術師たち 2【怪盗キッド】

81:な、何…… ページ32

と油断した隙に体がぐらりと動く
グッと急に引き寄せられ、
彼は微笑み、手を引いたのだ



「え？」
(な、なに？)
突然奇想天外の行動をとられて何が起こったか瞬時に理解できていない


「……さぁ……彼が此方にくる前に
貴女は安全な場所に
KIDが出現してから時間がたちましたので
もうそろそろ出てくるころでしょう」

「え？でてくる？
警察の方、大勢いらっしゃるんですよね？
でてくるってどういう…」

「あぁ、警備を固めてはいたのですが、
どうやら今回も取り逃がしてしまう可能性が高かったので

まぁ男の私としては、女性一人の安心を得る務めをすべきとは思っていたのですが、
どうも彼が関わる事件となると狂ってくるんですよ、悔しいことにね

さぁいきましょう」


腕を回された肩が強く前に進むよう誘導する
是が非でも私をこの場から立ち去るようにしたいのだろう

(ぇ……どうしよう)

「ぁ……あの…」



(私、その彼と約束してるんですけど
此処で待ち合わせって……)

もちろんそんな事言えるわけない


「どうかしましたか？」



彼が不思議そうに私をのぞきこむ
…またこの距離感も私を焦らせる


(こんなことやってるうちに来てよー…
屋上出ちゃったら、帰れなくなっちゃうよ)



「…で、でもやっぱり……



今戻ったら騒動に巻き込まれるかも
…」

(ここまで来たら従ったほうがいいの？
下手にここにとどまっても無駄みたいだし

ここで時間稼ぎすればどうにかなりそうだったんだけど
ちょっと時間切れかな…)



バッチリと向き合う形で彼と目が合う
無駄に近いし
相変わらず肩に手はあるし…


そのせいか、語尾が小さくなってしまった



「……なら私が騒動が終わるまで
安全な部屋にでも案内しましょうか？」


微笑んでいた顔が真顔に変わる
その視線は真剣な感じで……


「ぁ、いや、そんな……

それはその…」

(てかなんでそんな距離近いの？
見透かされてるみたい
なに考えてるんだろう
わからない

…助けて



シュッッ…



目の前に
私と彼の間に

なにかが横切った



トランプだ


後ろを見た瞬間、
探偵が怪盗に睡眠ガスがかけられる

探偵はトランプ銃から放たれたトランプを目でおい、そのまま意識をとられていく

絶妙な場所に

ハンカチで鼻と口を軽くおさえて
睡眠ガスを吸わないよう、ガードした私だったが
疲れと緊張から来たのか
体が重く感じた

(ぁ、やっと来てくれたんだ…
もう脚が縮みそう)

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