華麗なる奇術師たち 2【怪盗キッド】

72:混乱状態 ページ23

正直、頭の中はごちゃごちゃしてて
頭がまわらなくて


当然話も聞こえてなかったわけで


(ヤバいな、ぼーとしてて全然聞きけてなかった
何を話したかな？
全然

今日の打ち合わせ？話してくれてたのかなぁ

でも何怒ったってことは何かしたの？
うーんと…なにもされてないし
ええっと、

真っ直ぐ見られて目ががっちり合って焦る
いやいやそんなに見られたら困る


あれ、……困る？どうして？
どうして困るの？
どうしよう…

…自分がわかんなくなっちゃった)



「あれ？怒ってなさそうだな

ならいーんだけど」


(怒ってって…


…ぁ///さっきのいきなり引っ張ったやつ？
そんなこと言われても危なかったから
たすけてくれたのでしょ？

一応ありがとうと
怒ってないっていう最低限のことは言えたが
なんか余計なことを言ってしまいそうで
結局曖昧に誤魔化した私

(うわぁ…もう、気まずいよ
どうしよう焦)


そんなこんなしていると
いつの間にか前の方に来ていた
もうすぐ順番がくる

途中で話題を探して
打ち合わせすることとかないかなって
考えたけど、結局思い付かず
なにも言い出せないままでいた



少し冷えてきたな…
ほぼ日が落ちてきたもんな
だいぶ暗くなってきた

皆こんな遅くでも居るもんなぁ
凄いなKIDファン…
しかもどんどん並んでいる列は増えてるらしいから、相当期待しているみたい

感心しながら
凍えた手をゆっくりさする

手に息を吹きかけてあたためる
ふと顔をあげると
目の前に手を出された



「ぇ？」


「手」

「ん？……あ」


少し乱暴に握られた右手を
そのまま彼のポケットに突っ込まれる

彼の大きな手の温もりが伝わってきて
やっと落ち着いてきた気持ちが
また騒ぎだす


「寒いんだろ、
風邪引いたら困るから」
早口で言われる


「あ……」

(いや、うん
寒いよ…寒いけどぉ焦)



「あの…
ありがと……」

「おう…
もうすぐで順番来るからな」

彼のポケットにはなにも入ってなかった
いざというときをいっぱい遭遇しそうだから
なにか入れてあってもおかしくないのに

完璧主義なのだろうか
たまに見せる彼のプロ意識は
感心しきれない

(今だって彼は私をただ
心配してくれてるだけだもんな
私一人が焦ってるだけなんだよな…

冷静にならなくちゃ


……それと、やっぱり私は邪魔だったかな
しまったな…)

彼がショーをしているところをしっかり観るわけではないけど、挑むあの目が見たくて付いてきたのだ
今更になって申し訳なく思った

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