【怪盗キッド】奇術師と道化師 捌

第３３６話 ページ7

「移ろい……順番的な？」 聞くと快斗は首を縦に降る。
「そう、部屋の四隅に台座があるだろ。あの台座に順番通り身を預ければ麒麟の角を手に入れられるってことだ」

身を預けると言うことは、端的に言えば押せばいいんだろう。麒麟の角を手に入れられるってことはあの真ん中の柱のなかに麒麟の角があるのだろう。わかってなかった部分を推察しながら、なるほどと呟く。

「順番通り、四つの台座を押せば鍵がなくても麒麟の角をゲットできる」
「そう」
「しかし坊っちゃま、その順番は？」
「麒麟が中央にあると言うことは、四つの台座は四神ーー青龍朱雀白虎玄武を表していると考えていい。これらはそれぞれ春夏秋冬を表しているから、季節の順番に台座を押せばいいってことだ」
「……流石です」「IQ400は伊達じゃないね」

寺井さんは感嘆の声をあげ、私は口笛を吹いた。「正しき理がなんだかわかんねえけど台座に鍵穴があるしおそらくちゃんと解錠用の鍵があるんだろ」と言ってから快斗は再び顎に手を当てる。

「四つの順番通り台座を押すことは可能だけど、一人で回るとタイムロスだな……パッパッと押せればいいんだけどなあ。俺とジイちゃん、Aを入れても三人だ。それに三人もあの狭いお堂に入ったら流石に邪魔だ」

確かに。それにさっき言ってた子どもに化けたいと言うならこのお堂の中には大人は一人でも少ない方が都合が良さそうだなと思う。まあ進言しなくても快斗はそこまで考えているだろうし、黙っておこう。

「でもこのお堂電気もなんだか取ってつけたような蛍光灯だし、ボロいし、そこまで考えなくても力ずくで奪えそうだよね」
「なーに言ってんだ。俺は『怪盗キッド』だぞ。力ずくなんて紳士的じゃない」

コン、と快斗は私のおでこを人差し指で突いた。そうでしたね〜と薄ら笑いを浮かべる。

「まあ明日すぐに予告状を出すわけじゃねえし……少し考えてみるか。丁度、帰んなきゃいけないっぽいし」

帰る？ 聞こうとした瞬間、業者が四、五人やってくる。『只今から電気工事を行うののでお堂の公開は中止します』という立て札を立てて、見物客にその場から退くように呼びかけた。

「ま、いろいろ収穫はあったし万々歳だ。帰るか」

私たちは業者を注意深く観察しながら踵を返して、お堂を後にする。電気工事、とはなんだろう。まさかあのぶら下がった蛍光灯は電気がまだ通っていないのだろうか。そこまでオンボロなのかと私は心の中で呆れたように笑った。

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