第349話 ページ20
Aと駅で別れてから、俺はプルーパロットには向かわず足を止める。
辺りを見回して
人混みに紛れて近づき、逃げようとするヤツの肩を掴む。
「おい、いったい何の用だ」
「……どうかしましたか?」
「惚けんなよ……ずっと尾行しておいて」
掴んだ手に力を込めたが振り払われる。
ブロンドの髪に褐色肌、歳が判別しづらいベビーフェイス。
洒落たスーツなのに目立たない身のこなし方。
Aが組織から帰ってきた時とーー同じ匂いのする男。
「尾行? なんのことですか?」
「白を切るつもりか……俺たちのことずっと見てただろ」
「……君とは初対面だと思いますけど」
クスッと男は困ったように笑った。
はぐらかされているーーあるいは馬鹿にされている。
「Aとーーーーお前、組織のやつだろ」
「……そうです。といったら?」
「やっぱり……」
もう一度男の肩を掴んで「何が目的だ」と問う。
男は振り返り、俺と向き合った。
「初めまして……怪盗キッドくん」
「!」
「目的……そうですね。強いて言うならAさんを返してもらおうかと」
「あいつは、ものじゃねーんだぞ……」
男は淡々と喋る。見下すような笑みを浮かべながら、一歩距離を詰められる。
反射的に後ずさりをしてしまう。
「では理由を変えましょうか。Aさんに僕の所持品を奪われてしまっていて、返してもらおうと声をかけようとしていたんです」
「声をかける……割には、物騒なモノ持ってんじゃねーか」
スッと先ほど男から抜き取ったスタンガンを左手に取る。
男は一瞬だけ驚いた顔をして、自分のポケットを触って確認し「なるほど」と息をついた。
「こんなもの持って話しかける男がどこにいる?」
「護身用ですよ……それにモノを取られているのは本当ですから」
試すような目で男は俺を見てくる。瞳が光って、何もかも見透かされている気分だ。
やや沈黙が流れて男が口を動かす。
「僕でよかったですね、怪盗キッドくん。組織の他のメンバーだったらこの場で君のことを殺していたかもしれないですから」
「ーー! 相変わらず物騒な組織だな」
「まあなんにせよ、Aさんには日を改めて接触させていただきます。そのスタンガンは差し上げますので……では」
男はくるりと踵を返し、人ごみの中に姿を消した。
人が邪魔で追いかけられず、俺はスタンガンを握りしめて諦める。
深く息をついて、ブルーパロットに向かうことにした。
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匿名 - 初めまして。楽しく読まさせて頂いています。一つ尋ねたいのですが195話で言っていた「零」シリーズ?はどこに行ってしまったのでしょうか?読みたいのですが見当たらなく…もし公開していないのであればぜひ公開してほしいです。宜しくお願いします。 (2022年1月11日 19時) (レス) id: 0d9a3fa9b5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - とっても面白いです。続きを楽しみにしてます。 (2021年6月26日 20時) (レス) id: 2e973fc2c9 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - もしこのサイトを開く機会があれば、またほかのサイトで書くことがありましたら、ぜひまた読ませてもらいたいと願うほど、本当に素敵な作品でした。ありがとうございます (2021年5月12日 12時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 本当にとても面白かったです!更新待ってます!!! (2020年8月5日 22時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - ただの純愛じゃなくて、少しドロドロ?してて面白いです!組織がやってることブッ飛んでるな、とか思いつつ笑 快斗と主人公がこれからどうなるのか、組織にまたまた捕まってしまうのか展開が楽しみです!更新楽しみにしてます! (2020年5月28日 23時) (レス) id: 9f6637cdbb (このIDを非表示/違反報告)
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