第343話 ページ14
明日から? 少し引っかかった。いつもなら今すぐにでも準備を始める癖に。今日の下見だって昨日決まったことだろうに。下見して計画立てたから今日は満足なんだろうか……そんな性格じゃないだろうに。なんて考えていると快斗が私の肩をちょんと指でつついた。
「A」
「何?」と快斗の方を向くとスッと顎を掴まれる。先ほどの玄関のように。忘れていた緊張がかえってきて、心臓が大きく跳ねる。快斗の瞳が、視線がこちらを向いている。逸らそうとしても動かせなかった。
体をぐっと寄せられ、背中に反対の手を回される。もう逃げられない。息のかかる距離で私はただただ心臓の音がうるさくなるのに耐えることしかできないのだと悟った。
「舌、出して」
口調は優しいがどこか冷たい感じがした。視線を逸らして一センチくらいだけ舌を出すと快斗は「こっち見て」とだけ言う。視線を左右に振って何度か瞬きをしてから、意を決して快斗を見た。
「あ……ひゅか、しぃ……」
舌を出したままだから何を言っているかは伝わってないだろう。でも察して欲しい。『恥ずかしい』だ。快斗は口元を緩めてから「もうちょっと舌出してよ」と意地悪をする。
「……ん」
一度唾液を飲み込むために引っ込めてから数センチ舌を出す。快斗は「よくできました」と囁くように言ってから私の顎を少し持ち上げる。あ、やばいこのカッコなんだかーー
「犬みたい」
思ってたことを声に出され、ますます恥ずかしくなる。舌先が少し震え、気持ち呼吸がしづらい。ね、とせがむように私は快斗の胸元に右手を添える。
「今日はだいぶ、欲しがりだな」
フッとまた笑う快斗。私はうるさいと心の中で否定して視線だけで快斗を求めた。そんな私を見て快斗は私の顎を右に傾け、首筋に顔を埋めた。
「ひゃ……っう」
首筋に湿った感触ーー遅れて痛みが走る。でもそれは知ってる痛みであって心地いい痛みでもあった。ややあって快斗が痛みの走った箇所を舌で飴のようにペロリと舐める。首筋から快斗が離れたかと思えば、今度は顎を左に傾けられ、こちら側にも同じ所作を行われた。そして人差し指の爪をたて左右につけられたシルシを結ぶようになぞる。痛みはないがきっと首に線のような痕が付いた気がする。まるでーー首輪みたいだと思った。
「求めたのは、Aだからな」
脳を揺らすような甘い声だった。快斗は顎から手を離し、舌を重ねた。そのままするりと舌が口内に入ってきて、絡められて、上下に動かされる。
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匿名 - 初めまして。楽しく読まさせて頂いています。一つ尋ねたいのですが195話で言っていた「零」シリーズ?はどこに行ってしまったのでしょうか?読みたいのですが見当たらなく…もし公開していないのであればぜひ公開してほしいです。宜しくお願いします。 (2022年1月11日 19時) (レス) id: 0d9a3fa9b5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - とっても面白いです。続きを楽しみにしてます。 (2021年6月26日 20時) (レス) id: 2e973fc2c9 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - もしこのサイトを開く機会があれば、またほかのサイトで書くことがありましたら、ぜひまた読ませてもらいたいと願うほど、本当に素敵な作品でした。ありがとうございます (2021年5月12日 12時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 本当にとても面白かったです!更新待ってます!!! (2020年8月5日 22時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - ただの純愛じゃなくて、少しドロドロ?してて面白いです!組織がやってることブッ飛んでるな、とか思いつつ笑 快斗と主人公がこれからどうなるのか、組織にまたまた捕まってしまうのか展開が楽しみです!更新楽しみにしてます! (2020年5月28日 23時) (レス) id: 9f6637cdbb (このIDを非表示/違反報告)
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