【怪盗キッド】奇術師と道化師

第16話 ページ18

――と、こんな感じで私の居候生活が始まった。
一夜明け、時差ボケが今更襲ってきた私は寝ようと思っていたのだが快斗さんに叩き起こされた。

「とりあえず、おめーのことを知ってるのは俺とジイちゃんだけな、青子達にもおめーのことは伏せとくよ」

学ランを羽織り、ボタンをとめながら快斗さんは言った。

「なんでですか？」

ふあ、と欠伸をして早く寝させろオーラを出してみる。

「別に大した意味はねーよ、青子にこれ以上迷惑かけたくねーわけだし」
「成程、朝昼晩ごはんを給仕してもらっている彼女――っていうか婚約者に迷惑かけたくないんですね、わかりますわかります」

あーそうだよ、と頷いてから彼は、ん？ と頭に疑問符を浮かべた後
「そそそそんなんじゃねーよ！ こここ婚約者だぁ！？ ちちちがちがう！」
と慌てふためいていた。

なかなか面白い反応なのでこれは使えそう。

「わりーけど、昼飯とかは適当に食ってくれ、なんなら出前とかとってくれてもいいし」
「了解了解おやすみなさい」
適当に流しておいた、快斗さんは特に気にも留めなかったみたい。

「じゃー俺は学校に行ってくるよ、なんかあったら連絡してくれ」
「授業中に連絡とれるんですか？」
「とれるよ」

……いや問題だろ。とつっこむと「俺まともに授業受けてねーし」と返される。
これは千影さんに報告ですね。

「いってらっしゃい」

快斗さんは静かに手を振るだけで行ってきますすら言わなかった。
ん？ 朝飯食べてたかな？ 快斗さ――ああ、今から青子さんのところ行って食べるのね。
お熱いなぁ〜ひゅ〜ひゅ〜。

なんて一人で盛り上がってたとその時――

「だぁ！ かぁ！ らぁ！ 魚を朝飯に出すなってんだろ！！！」
隣の家から劈くような声――快斗さんの声。

「いーじゃない！ 魚は健康にいいのよ〜」
負けず劣らずの大きな声――この声が青子さんかな？ 覚えておこう。

「嫌いなもん食うなんて毒食うのといっしょだろ！？」
「青子の料理が毒入りだっていうの？！ じゃあ食べないでよ！」
「んなこといってねーだろ！ 魚以外は食うよ！」
「ちゃんと食卓に出されたの食べないなんて小学生かしら！？」
「ガキはどっちだ！ 胸もねーし全体的に子どもな青子さぁ〜ん？」
「なぁ、なぁによぉう！」

……夫婦漫才かな？
こりゃ当分寝れそーにないね。
呆れる私とは裏腹に彼らの痴話喧嘩はヒートアップ。

「It is very interesting……」

私は耳栓をしてソファーに横になった。

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