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「ね、Aさん。僕とちゃんと、友達になってよ。大学生の僕の、ただの友達としてさ。」
思わず黙ってしまった。
山本くんに、そんなことを言われると思っていなかった私はなんて答えていいか分からない。
本当に、友達に話しかけるような口調で、山本くんは私との関係を築こうとしてくれている。
有名人だから、と積極的に関わることに後ろめたさを感じていた私にとって、その発言は衝撃的でしかなかった。
それと同時に、山本くんの人の良さというか、きっと根から本当にまっすぐな性格を感じて、山本くんは本気で言ってくれてるのだろうと、やっとその言葉を飲み込むことができた。
「山本くん、変わってるって言われない?」
「ん?え?」
「友達になろう、なんて、ほんとに友達になるときに言う?」
思わず笑いながら返す。それにつられるように、山本くんもあははっと声を上げて笑う。
それは何度か見た、あの笑顔だった。
「うん、じゃあ友達になりましょう、山本くん。」
「やった!じゃあもうお礼にとか、そういうの抜きにして、ほんとにご飯行こうよ、Aさん。いつなら行ける?僕、今日の夜なら撮影終わったいけるよ多分。」
「じゃあ、もう、今日行こう。私もお休みだし、山本くんの終わる時間に合わせるよ。」
YouTuberだとか、有名人だとか、そういうことを考えるのはとりあえず置いておこう。
あの日、何も考えずに声をかけた、あの時の自分に感謝した。
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作者名:湊 | 作成日時:2019年11月6日 18時