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276話# 声 ページ10

〜豪炎寺side〜


今日は朝から頭が重くて、どこかへ飛んでいってしまいそうな気分だった。

だけどサッカー部の練習は休みたくなかったから、我慢して出ることにした。



ボールを蹴ってしばらくすると、雨が降ってきた。

風も強くなってくる。




コーチと話をしていた監督から声がかかる。



監督「何だって?...おい、お前たち!台風が来ているそうだ!今日はこのまま解散するから、速やかに家に帰るように!!」




思う存分動かない体だったが、部活は途中で休止。


更衣室でジャージに着替えて、学校を出てやっとの想いで駅まで歩く。

ボーっとした頭は、コンビニで傘を買うことにすら繋がらなかった。




だるい。

頭が痛い。

体が重い。

早く家に着け。




そう思いながら改札口まで行くと、そこは人で溢れていた。

電車が止まっていたのだ。




修也「はぁ」





駅の近くに住んでいるチームメイトの家に行こうかと考えながら駅の外に出る。

強い嵐に見舞われ、足がうまく運べない。



と、その時だった。





「おい!豪炎寺!!」


修也「!」




呼ばれて振り向くと、そこにいたのは緑川。





修也「緑...川?」


緑川「傘もささずに何やってんだよ、びしょぬれじゃないか」


修也「あ、ああ」


緑川「ん?お前具合悪いのか?」


修也「ちょっとな...」


緑川「家は?」


修也「ここから電車...だけど」


緑川「もしかして1人暮らし?」


修也「ああ」


緑川「んじゃ、俺んちに来いよ。な?」





そこからの記憶は曖昧だ。




車に揺られて緑川に支えられて、雨風に少しだけ打たれながら室内に入る。

ところどころしか聞こえない会話が繰り広げられる中、心地の良い声が耳を通って重い頭に流れ込んでくる。




??「ちょっ、ちょっと待って!ヒロトー!!」

??「ちょっとソファの上にバスタオル2枚敷いてくれる?」

??「緑川、風邪引いちゃうから熱いシャワー浴びてきて。ヒロトは戸締りと濡れた所拭いて」





何だろう、この感じ。



心の奥深くにしまい込んだ箱が、暖かい温度に包まれて、箱の中から懐かしい気持ちが湧き上がってくる。

頭がくらくらして前は見えない。

だけど心に響いてくるこの声は...どこか俺を落ち着かせてくれる。


何も考えられない頭は、懐かしい名前を思い起こさせてくれた。




修也「A...?」




すがるような想いでその名を呟く。



そしてその温度に触れた瞬間、俺は意識を手放した。

277話# 懐かしい名前→←275話# 目の前にいる人



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ノコ(プロフ) - 再開、嬉しいです。ななっちさんの作品はどれも心に染みます。ありがとうございます。大切に読ませていただきます。 (2020年5月27日 1時) (レス) id: a7f52ab7e6 (このIDを非表示/違反報告)
ななっち(プロフ) - Lakeさん» こちらこそありがとうございます〜 (2020年5月26日 20時) (レス) id: 6b7ac9b579 (このIDを非表示/違反報告)
ななっち(プロフ) - ムスメ3さん» ありがとうございます! (2020年5月26日 20時) (レス) id: 6b7ac9b579 (このIDを非表示/違反報告)
Lake(プロフ) - 更新ありがとうございます〜! (2020年5月26日 20時) (レス) id: 7e7ce81c15 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - おかえりなさい (2020年5月26日 20時) (レス) id: 87b01b0a04 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ななっち | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/trhthe/  
作成日時:2018年2月14日 23時

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