気まぐれボイジャー【豪炎寺修也】第八章 (ページ34)

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３００話#　運命の人ページ34

#本屋#

『8月17日(火)晴れ、児童書棚変え作業終了、他異常なし、如月』

業務連絡帳に書き込みを終えて、あたしはノートを閉じてデスクの上に置いた。

A「先輩、終わりました」

「おけ。じゃあ今日はこれで閉店作業も終わり。皆さんおつかれっしたー」

「「「お疲れ様でした」」」

22時、退勤時間ぴったし。

もう緑川は合宿から帰宅しているはず。

更衣室で制服からＴシャツに着替え、ショートパンツに履き替える。

上からロングカーディガンを着てカバンを持ち、あたしは事務所に戻る。

A「じゃ、お先失礼します」

事務所の扉に手をかけた時、後ろから声を掛けられた。

「如月、ちょっといいか？」

A「？」

バイトの先輩だ。

1コ上の大学3年生。

「今から暇？ちょっとだけ飲み行かない？」

A「この辺でならいいですよ」

「よし、じゃ行こうぜ」

先輩の後について店を出て、あたしは夜道へ踏み出した。

・

#居酒屋#

駅前の商店街にある居酒屋のテーブル席。

レモンサワーを飲みながら、あたしは先輩と話していた。

「そんで聞いてくれよー。そのドラムの奴さ、いきなり駐車する時壁に車ぶつけてさ」

A「あははは、ぶつけちゃったんだ」

「おいおいおいってなって」

A「楽器は無事でした？」

「なんとかな。ただあいつ超ビビッてもう当分運転しないとか言ってる」

A「へぇ～失恋でそこまで狂わされちゃったんですねｗ」

「まあそういうもんじゃね？失恋って。如月はあんましたことないか」

A「ないっす」

「憎い」

A「ふふふ」

なーんてね。

「恋ってしない？疎いほう？」

A「うーん、あんま人を好きにならないんですよねー。本気になれないっていうか。大学の男友達とかに対しては特に」

「そっかぁ。運命の人に出会えてねーんだな」

運命の人、か。