気まぐれボイジャー【豪炎寺修也】第八章 (ページ12)

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２７８話#　同じ表情ページ12

～Aside～

立ち上がってオープンキッチンまで移動する。

A「...」

修也に握られた左腕には、彼の熱い体温がしっかりと残っていた。

ソファに寝そべっている彼と、昨日、信じられない再会をしてしまった。

偶然としか言いようがない。

あの高熱だ。

きっと彼は昨日起こった出来事を覚えていない。

昨夜の残りのご飯を温めて、スプーンでマグカップに少し入れる。

そこにミルクと溶かしたコンソメを混ぜ入れ、電子レンジで再びチン。

温まったマグカップをスプーンでかき混ぜ、上から粉チーズとパセリを一振り。

それをお盆に載せ、グラスに注いだ水と共にソファへと運んで行く。

ちゃぶ台にお盆を載せて、修也の肩に腕を回す。

彼を座らせて、マグカップを渡すと、彼が口を開いた。

修也「これは、何だ？」

A「シチュー風のミルクリゾット。食べないと薬飲めないから」

修也はリゾットをスプーンですくって口に運ぶ。

次第に彼の表情が柔らかくなっていった。

A「...」

懐かしいな。

昔、こうして修也に手料理を食べさせたよね。

いっぱい喜んでくれたっけ。

もう、あの時間は戻らない。

けど同じ表情が目の前にある。

あの頃と比べて、修也は更に日焼けをして、肌の色が濃くなった。

形良い眉と切れ長の目は相変わらずだけど、どこか凄味が出てきたような。

まさか、またこの顔が見れるだなんて思わなかった。

棚の上にある薬入れの中から解熱剤を取り出し、修也に差し出す。

A「食べ終わったら、これも飲んでね」

ちゃぶ台に向き直り、パソコン用のメガネをかける。

そうしてあたしはまた実験のレポートを再開した。

文字を打っていると、後ろのソファから話しかけられる。

修也「今、何時だ？」

A「...３時半。ヒロトも緑川も寝てるから、修也も寝てて」

修也「お前は？」

A「やることがあるからまだ起きてる。それに」

修也の看病しなくちゃならないでしょ。

A「昨夜、台風で土曜の授業全部休講って連絡が入ったから、早起きしなくていいし」

修也「そうか。酷い雨だもんな」

窓に叩きつけられる雨風は、未だに止まない。