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「柏村司さんですよね」
此方が返答するより先に無遠慮にずかずか近付いてきた男性。
申し遅れました、と口から吐き出された言葉は丁寧ではあるが、他がてんでダメ。
有無を言わさず、名刺は半ば押し付けるように、一方的に名乗っては「ストーカーの件で…」と踏み込んでこようとするその様子に思わず私の足は一歩二歩と後退りする。
「済みません、そういうのは事務所を通して頂けますか」
『紀章さん…』
男性と私との間に割って入った彼の名前を呼べば、大丈夫だからと落ち着き払った声が告げてくる。
マスク越しでも分かるくらい柔らかく微笑んでくる彼に、お願いと頭を縦に動かした。
「…奥様にお話し伺いたいのですが」
「先程も申しましたが、彼女に話を聞きたいのなら事務所を通して下さい。僕からはそれ以上は何も言えません」
「お時間は取らせませんのでどうか」
「何度も申し上げた通りです。
……失礼します。」
行こう、と手を引かれて歩き出す。
いつもより繋いだ手には力が込められて
常に合わせてくれる歩幅はその長い足をフルに活用して大股に、そして早歩きだ。
追い付けないわけではないし、一刻も早く離れたいのは私も同じでその大きな背中が離れていかないように足を動かした。
‐
「社長はなんて?」
『ホームページで改めて言ってくれるって』
場所を移動して、適当なカフェの中へ。
事務所へ報告はしておいて、紀章さんが一人腰掛ける席の向かい側へと腰を下ろす。
さらりとソファー席を残すあたりが紳士的である。
「社長キレてたでしょ」
『そりゃもう』
激おこぷんぷん丸って感じで、と付け加えれば水を飲んでいた紀章さんが前のめりになって笑いのツボに沈んだ。
うん、ごめん。でもありがとう耐えてくれて。
「ふwるwいw」
『世代なもんで』
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愛夢(プロフ) - 紀章さん好きには堪らない作品ありがとうございます!!更新頑張ってください! (2023年2月6日 18時) (レス) id: 1fb4caaf97 (このIDを非表示/違反報告)
最小幹部 - Yuiさん» Yuiさん、返信大変遅くなってしまい申し訳ありません。コメントありがとうございます!マイペースに更新しているのでまた覗いて頂ければ幸いです(*^^*) (2022年2月6日 20時) (レス) id: 1b7127d9e3 (このIDを非表示/違反報告)
Yui(プロフ) - 紀章さんファンなんで小説を作成してくれてすごい嬉しいです!続きを楽しみにしてます! (2022年1月16日 13時) (レス) @page5 id: 3c14c8fbd4 (このIDを非表示/違反報告)
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