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8時間目 虚無 ページ9

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教師のHR終了を告げる声と共に下校を告げるチャイムが鳴る。
嗚呼、もう終わったのか、なんて他人事のように思った。

唐突な告白、その後の奴の態度、クラスメイトからの干渉のせいで
全く学業というか、学校生活に身が入らない日々が続いていたのだ。


――――もう今日はとっとと帰って休もう。


リュックを背負って立ち上がる。
その瞬間、斜め前に座る奴――――白川奏多が筆箱や参考書をまとめているのが視界に入る。
鞄を持っていないあたり、これから図書室に自習に行くのだろう。

嗚呼、あいつの行動パターンを理解してしまっている自分に嫌気が差す。
思わず漏れた溜息は、奴が立ち上がった際の椅子を引く音にかき消された。



*



下駄箱で上履きからローファーに履き替え、校門へと歩を進める。
遠くから運動部の掛け声が聞こえた。野球部かどこかが走り込みをしているのだろう。

私も部活に入って運動にひたすら打ち込める環境下にあれば
こんな風にぐるぐると考えることもなかったのだろうか。
ああ、検討するか運動部。テニス部とかいいな。私もボールを追い続ける青春がしたい。


ほぼほぼ現実逃避であったが、そんなことを考えながら校門の前へとたどり着いた。
それと同時に校門がざわついているのが目に入る。



『え、あれ―――高の制服じゃない?』

『待ち合わせ?彼女かなあ』



声のする方を見れば、そのざわつきの理由も分かった。
校門には、地元でも有名な私立高校の制服に身を包む男が携帯を弄りながら立っていたのだ。

オレンジにも見える派手な茶髪と怖いくらいに整った顔が印象的なその男は
携帯を弄ったかと思えばきょろきょろと周りを見渡す。誰かを探しているようだった。



『誰か待ち合わせですか?知ってる子なら呼んできますよ』



遠巻きに見ていた女子2人が男に話しかける。
男の方も『本当すか、』なんてにこりと微笑みかけた。うわ、イケメンの笑顔。眩しい。





『友達と待ち合わせしてるんすよ、カナタ―――白川奏多って言うんですけど』

「え、」



慌てて口を押さえたが既に漏れ出た声は男の耳にも入ってしまったようだ。
またか。ここでもお前なのか。白川奏多という名前を今日何回聞いた?もううんざりだ。

ああもういい、もう帰らせてくれ。



『え、カナタのこと知ってるんすか』なんて言いながら
此方に向かってくる男を前に、思わず天を仰いだ。ああ、今日も空がきれいだ。



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ラッキーアイテム

真宮寺陽のピアス


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設定タグ:オリジナル , 恋愛 , ケンカップルは至高   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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綾木 麗(プロフ) - めっっっちゃ好きです(語彙力) (2022年11月6日 23時) (レス) id: 5a575a9999 (このIDを非表示/違反報告)
ぴのいちご(プロフ) - 夜澄ソラさん» お褒めの言葉頂き嬉しいです……!元々自己満足で自分の好きな物を詰め込んだだけのものなので好き嫌いは別れても致し方ないのかななんて思います、コメントほんとにとっても嬉しいです、ありがとうございます! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
ぴのいちご(プロフ) - 颯貴さん» 初めて長編小説を書かせて頂いたのですがそう言っていただけてとても嬉しいです……!これからもゆるゆる更新させて頂きますのでよろしくお願い致します……! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
颯貴(プロフ) - 夜澄ソラさん» ほんとにそれ。(あっFF外から失礼します)なんでこんな低評価なん?理解できないんだけど (2021年1月5日 23時) (レス) id: b9ddb7cad4 (このIDを非表示/違反報告)
夜澄ソラ(プロフ) - 一気に読んでしまいました。こんなに評価が低いのが理解できないくらい面白かったです……!続きも楽しみにしています! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 1c9f7aabed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴのいちご | 作成日時:2021年1月3日 12時

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