4時間目 疑問 ページ5
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終 わ っ た 。
私の頭にまず浮かんだのは、その一言であった。
泣いてしまった。奴の前で。
泣いてしまった。教室のど真ん中で。
奴の言い方はともかく、言っていることは全て正しかったのに。
嗚呼、くそ。正論を言われて泣くなんて。この歳にもなって恥ずかしい。
例の教室号泣事件の後。
普段泣いたりなんてしない私が泣いたことにより
一方的に奴が、白川奏多が悪者となった。
そんな中で1つ。気に掛かったことがある。
それは、クラスの子から何泣かせてんだと責め立てられていた奴が、
いつものように悪態をつくわけでもなく「ああ、」だの「そうだな」だの
当たり障りのない返答しかしていなかったことだ。
だって、特に今回は奴に非は殆どないというのに。
もしこれが普段の奴であるならば、
たとえ自分が悪かったとしても必ず言い返していたと思う。
だから、今回も『自分の怠慢で泣いたのだから自業自得だ』
位のことは言うと思っていたし、私自身も言われて当然のことをしたと思っていたのだ。
……思っていたの、だが。
*
「…………落ち着いた?」
あの後、教室のど真ん中でボロ泣きをするという失態を犯した私は
保健室へと連れてこられていた。
普段泣かない私が泣いたということで、カウンセリングという面もあったのだろう。
保健室の先生は私を椅子に座るように促し、自販機の紅茶を用意してくれた。
本当に優しい先生である。
「落ち着きました……。ほんと、お時間取らせてすみません」
「こういう時のために私が居るんだから気にしなくていいよ。
なに、今日はどうしたの?ちょっと疲れちゃった?」
「うーん、まさしくその通りというか……
限界だったというか、キャパオーバーしちゃったって感じですね」
ハハ、なんて取り繕うように出た笑いは、自分でも乾いた笑いだと思った。
そんな私に先生はにこりと笑う。ああ、この人ほんと美人だな。
「ね、そんな佐藤さんにお客さんが来てるんだけど」
「……え、」
「嫌なら追い返すって言おうと思ったけど、
きっと貴女はそんなこと言わないだろうなと思って」
"入っていいよ"
先生の声とほぼ同時に、年季の入った、戸を引くあの特有の音が響く。
「…………」
「……なんで、」
戸の向こうにいたのは、
如何にも気まずそうな顔をした奴―――白川奏多の姿だった。
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綾木 麗(プロフ) - めっっっちゃ好きです(語彙力) (2022年11月6日 23時) (レス) id: 5a575a9999 (このIDを非表示/違反報告)
ぴのいちご(プロフ) - 夜澄ソラさん» お褒めの言葉頂き嬉しいです……!元々自己満足で自分の好きな物を詰め込んだだけのものなので好き嫌いは別れても致し方ないのかななんて思います、コメントほんとにとっても嬉しいです、ありがとうございます! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
ぴのいちご(プロフ) - 颯貴さん» 初めて長編小説を書かせて頂いたのですがそう言っていただけてとても嬉しいです……!これからもゆるゆる更新させて頂きますのでよろしくお願い致します……! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
颯貴(プロフ) - 夜澄ソラさん» ほんとにそれ。(あっFF外から失礼します)なんでこんな低評価なん?理解できないんだけど (2021年1月5日 23時) (レス) id: b9ddb7cad4 (このIDを非表示/違反報告)
夜澄ソラ(プロフ) - 一気に読んでしまいました。こんなに評価が低いのが理解できないくらい面白かったです……!続きも楽しみにしています! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 1c9f7aabed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴのいちご | 作成日時:2021年1月3日 12時