辞世のライムを刻むよ、キミに。 (ページ4)

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逢魔が時にページ4

どんなに発展してる都市でも、
少し道を外れてみると真っ暗い路地がある。
なんでも飲み込んでしまいそうなくらい暗い。
そんな路地に気を留めることもなく、
いや、気づくことなく生きる人々。
路地の奥で
どんなことが起きているのかもわからず、
のうのうと生きているのだ。

自分の生活のすぐ側に何があるのかも知らない。
なんて幸せな人たちだ。

『…憐れ、ね。』

アワレ。
誰に向けられたのかもわからない言葉。
憐れなのは、何も知らない人々か、私か、
あるいは……

たくさんの人が私を追いこし、足早に進んでいく。
誰かが私の肩にあたり、何かが私の腕にあたる。

…私は歩みを止めた。
すると後ろからドンッというにぶい衝撃。
振り返ると、そこには一人のサラリーマン。
その人は私を見て何かを言い、
いらだったように去っていった。
…まぁ、想定内のことだ。
歩いていたら、
前にいた女がいきなり立ち止まる。
迷惑以外の何ものでもない。

人の流れは、
私を避けるようにして流れ続ける。
たった一人立ち止まったところで何もかわらない。
…この世界は、この日本はかわらない。

何年前だったのだろうか。
日本が"女尊男卑"になったのは。
そんなに昔のことではなかった気がする。
…二年、たった二年前のことだ。
中央区の"言の葉党"
あの者たちが全てを変えた。
あの日、あの時、
全国中継で前首相が退陣させられる映像が流れた。
その日を境に、日本は変わった。
よくも、悪くも。
…そう、よくも悪くも、ね。

ふっと視線をあげる。
さっきと何もかわらない池袋の街。
久しぶりに来た池袋は、
以前よりもカラフルになっていた。
赤・青・黄…さまざまな色にあふれている。
…少しまぶしいかもしれない。
こんなに色とりどりな光をあびるのは、
今の私には少し苦しいところがある。
だんだんと気分が悪くなってきた。
何かが私の身体(からだ)からせりあがってくる。
手が冷え、指先に力がはいらない。
幻聴か…私の名前が呼ばれた気がした。

『…きこえないくせに……』

聞こえないのだ、何もかも。
人々の足音も服ずれの音も息づかいもわからない。
私は何も聞こえない。