曖昧なモルヒネ

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これはヤバい。

かなりの手練れだ。

きっと今まで、いろんな人達を虜にしてきたんだろう。

男も女も関係なく。

上着を脱がせている途中で仕掛けてくるキスとか。

しかもそれは、挨拶みたいな行儀のよいものじゃなくて、前戯の途中みたいな熱を持っていた。

なのに、あっけなく唇を外すと、

「先、行ってるね」

軽く含み笑いで、ロフトの階段を上って行く彼を目で追いながら、少しだけ怖くなった。








だけど私は逆に、ワクワクしはじめてもいた。

少しだけ間を空けてロフトに上がれば、薄暗い空間の中、彼はもう遠慮なしにベッドの真ん中に横たわっていて。

一瞬で柔らかく私を組み敷くと、まるで「いただきます」とでも言いそうな目をして、そのまま強引に唇を落としてきた。

…ちょっと意外。

いつも冷めてる風で、どちらかというとストイックな雰囲気だったのに。

こんなキスとかするんだ？

もう本能剥き出しの、すごいやつ。







唇を離した彼は、真上から熱を帯びた目で見下ろしてくる。

何か言ってくるのか身構えてたら、また唇が降りてくる。

この２度目のキスで、もう余計なことは考えられなくなった。

こんな激しい求められ方をしたのは初めてで。

今までの彼との冷めたやり取りを思い返してみても、とても想像ができないような。

脱がせ方だって、脱ぎ方だって、情熱的なくせにスムーズで。

ああきっと、彼と一度でも寝た人間は、もう離れられなくなるんじゃないかな、みたいな。

だって今の私は、まさにそれだから。

きっとこの先誰と寝ても、彼との行為と比べてしまうんじゃないかな。

ベッドの上での彼は、普段とはまるで別人のようにも思えた。






彼の限界に近づいてきた時の表情が好き。

遠慮なしなくせに意外と優しく、肌に触れる指も。

重なった肌があまりに熱くて、真冬なのに汗をかいてしまいそうな、その湿った肌の感触も。

その快楽に没頭してるような、潤んだ瞳も。

もう、これきりかもしれないのに。

…会わなきゃよかった。

知らなくていいことを、教えてもらった感じ。

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