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「買ったのに住んでないって、何で？」
「なんか、一人で住むのは寂しいっていうか
いつか家族ができたら、住もうかなと思ってそのままにしてた」
彼の声はあまりに無感情で、その横顔も同じように無表情だった。
繋いでる手をぎゅっと握り返したら、ようやく緩く微笑んでくれたけど。
人間、生きているといろいろあるよね。
彼にも、人に言えない過去がいろいろあるんだろう。
「だから住まない？この家」
「…いいの？」
「だって結婚するんだし」
そうだね、私達は結婚するんだった。
愛し合ってるわけでもないのに。
ひと通り家を見て回ったあと、彼はリビングだったであろう部屋の真ん中にぼんやりと立ち尽くしていた。
きっといろいろ思い出してるんだろうな。
私の手をぎゅっと握り締めたまま。
「本当はこの家に住みたくないんじゃない？」
その無表情な横顔を眺めていたら、ついそんなことを聞いてしまいたくなってしまった。
驚いたようにこちらを振り返った彼は、取り繕うように緩く笑うけど、
全然、うまく笑えてないよ。
「なんか、記憶を塗り替えたくて」
そう言って彼はまた、力なく笑う。
「この家には、楽しい思い出も嫌な思い出もいっぱいあって
どっちかって言うと、嫌な思い出の方が多いかも」
「なのに買い戻ししたのは何で？」
「…なんでだろ
でも自分にいつか家族になりたい人が出来たら、この家できちんと暮らしてみたくて」
彼の言う「家族になりたい人」という言葉に、私は引っかかっていた。
「家族になりたい人って私？」
「Aしかいないだろ」
そんなに平然とした顔をして言わないでよ。
私達、まだ知り合って日も浅いのに。
そんなに簡単に思えるもの？
少なくとも私は、彼のことをそんな風にはまだ思えない。
「最初は、いつも店で愚痴ばっか言ってる女としか思ってなかったよ
でもその愚痴が、なんかいつも面白くて
落ち込んでるくせに、話にいつもオチをつけてくるし
いつも笑いを堪えてたんだけど」
だからか。
カウンターの中で彼はいつも、笑いを堪えたような顔をしてたっけ。
実は盗み聞きしてたんじゃん。
「まあ、あの頃から気になってはいたよね
で、あの日Aの部屋に遊びに行って、体の相性もよかったし」
結局はそれか。
でもそれって、実は重要だと思う。
だってこの先、彼は私以外の人と寝ることはないという、重い誓いを立てる予定なんだから。
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りたわかめ(プロフ) - 牡丹さん» ありがとうございます。更新遅めですが、また読んでやってください♪ (2021年3月8日 16時) (
レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
牡丹(プロフ) - はじめまして！オススメのところから辿り着き、一気に読ませていただきました(☆∀☆)スピンオフも楽しみにしています！！ (2021年3月8日 9時) (レス) id: 1a54c4e0e3 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - 汐里さん» 終わってしまいましたー♪続編も書きたいところなんですが、外伝書きたくなってきて、今ウズウズしてますw (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» 終わっちゃいましたよー(/ω＼)でも外伝書きたくてウズウズしてますがwww (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - nanacoさん» ありがとうございます。けっこう長い時間がかかってしまいましたが、最後まで読んでいただけてありがとうございます♪ (2021年1月12日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りたわかめ
| 作成日時：2020年2月15日 12時
