50 ページ50
なんてタイミングだろう。
まるで襲ってくださいといわんばかりに布団の上に仰向けで倒れ込んでしまった私を、
最初は驚いたのか丸い目をして見ていた彼は、しばらくすると柔らかく目を細めて微笑んで。
そして、ゆっくりと体を近付けてくる。
…ヤバい。
条件反射で、目を閉じそうになってしまう。
この雰囲気と、その色気を隠しきれていないその視線を、直視できなかったからなんだけど。
だけど我慢できずにぎゅっと目を閉じた途端、彼の動きが止まった。
しばらくの沈黙のあと、小刻みに彼の体が震えてるのに気付いて、薄目を開けて様子を窺ってみたら、
私の上に跨る形で、笑いを堪えている彼の姿が見えた。
「…何で笑ってんの？」
「だってAが緊張してるから」
「そんなに面白い？」
「そうじゃなくて、可愛くて
なんか新鮮なんだよね、こういうの」
そう言いながら私の上から降りた彼は、隣に同じように仰向けで寝転んだ。
「すげえ新鮮
Aの反応もそうだけど、俺もなんか柄になく慎重になっちゃってるし」
「慎重？」
「今までのパターンでいったら、付き合って何ヶ月も女の子に手を出さないなんて考えられないから、俺」
…だろうね。
彼は一体、どんな女の子とどんな夜を共にしてきたんだろうか。
想像するのも恐ろしいから、なるべく考えないようにはしてきたけど。
「なんか、もっと楽しみたくて
この状況を
簡単に越えちゃうなんかもったいなくない？」
それは私もそう思う。
ずっと波打ち際で、緩い波と遊んでいたい感覚。
次に大きな波が来たら、それはもう呑み込まれてしまうしかないけど。
「大丈夫、今夜はAには何もしない」
含み笑いで、彼はこちらに半身を向けるのに、私はまだ仰向けのまま。
指先や爪先なんかの、まだ末端に残る緊張感で身体がうまく動かせないでいた。
「最初からそのつもりで来てたし」
なんだ…、それならそれで早く言ってよ。
新しい下着を買いに行ったり、変に緊張したり、無駄な時間を過ごしちゃったじゃん！
ようやく緊張感から解き放たれた私は、ぐったりと四肢を解放して一呼吸置いてから、おもむろに彼に抱きついた。
「みんなとの旅行中に初めての夜とか嫌だろ、普通」
彼は私の髪を指で梳きながら、
「なんか…、Aとのことは、大切に進めていきたいって思うんだよね」
聞き取れないくらいの低音で、そう呟いた。
…大丈夫、私達は今夜も幸せだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2501人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りたわかめ(プロフ) - えりさん» ありがとうございます、多分、3ヶ月ぶりくらいに更新した気がします・・・。夏の間は死んでました(T^T) (2020年9月6日 21時) (
レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ひろさん» 本日、移行しました！読んで頂けたら嬉しいです(/ω＼*) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - わかめさん、更新ありがとうございました。めちゃくちゃドキドキです。 (2020年9月5日 17時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 久々の更新楽しみにしてました！！楽しく読ませていただいてます(*´ω｀*) (2020年9月1日 22時) (レス) id: 57f2f46317 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» わざわざ聞かせてみましたwwwいこう！ってwwww (2020年9月1日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りたわかめ
| 作成日時：2020年2月7日 22時
