星になんか願わない -Ａ

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１号はいつも、こんな言い方をする。

少し強引で、押し切っちゃうような言い方。

しかも私が何でも許してくれるのを知ってて、そういう言い方をしてた。

「…やっぱ、いきなりは無理？」

申し訳なさそうにそう聞いてきたのは、２号だ。

確実に、２号の中に１号は存在してる。

「いいよ」

やっぱり私は、１号だろうが２号だろうが、裕太のお願いなら何でも許してしまうんだ。







この間も部屋に来たばかりなのに、裕太は緊張気味な様子で部屋に入ってくる。

「いきなり来てごめん」

とか、遠慮がちに謝ってきたり。

落ち着かない様子で部屋をキョロキョロと見渡したあと、

「テラスに出ない？
そっちの方が落ち着くかも」

そう言っては、勝手にテラスに出てしまう。

テラスに置いてるテーブルセットに向かい合わせに座って、ようやく裕太は今日の話を聞かせてくれた。

「言ったから、飯塚さんに
Aさんと付き合ってるって」

なのに、裕太はちっともこっちを見てくれない。

視線を外に向けたまま、話を続ける。

「ちょっと…、迷惑かけちゃうかも
飯塚さん、かなり落ち込んでたみたいだから
でも、なんか言われたら無視して」

その言い方は、なんか１号っぽい。

裕太は昔から、興味があるものとないものとで扱いが極端に違うっていうか、

それは人に対しても同じで、興味のない人には悪く言えば冷淡。

だけど、裕太のそんな言い方がなんかツボに入った。

笑いを堪えながら、

「無視なんか出来るわけないじゃん、隣の席なのに」

そう答えたら、ようやく裕太はこちらを見てくれたけど、また逸らしてしまう。









「じゃあ…、まあ適当にあしらって」

その投げ遣りな言い方も、１号と同じっぽい。

もういい加減、目の前の裕太を過去の裕太と比べるのはやめないと。

２号の中に確実に１号は棲んでるけど、たぶん記憶が戻るのは難しいんじゃないかな。

いつまでも過去の裕太を引きずっていたら、今の裕太に失礼だ。

ありがたいことに彼は、別人格になっても私のことが好きだと言ってくれてるだから。

「何かあったら、きちんとフォローするから」

まだ目も合わせてくれないままの裕太は、そのまま勢いをつけて立ち上がった。

「…帰るわ、今日は」

きちんと、「今日は」ってつけるところが、生意気で可愛らしい。

また来るっていう布石みたいな一言は、私の胸をぽかぽかと暖かくした。

そういうところは、やっぱり昔の裕太と変わらない。

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