星になんか願わない -Ａ

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裕太は信じられないって顔をして、ますます興味津々に身を乗り出してくる。

「いなくなっちゃったとか？」

「うん
もう連絡も取れなくなっちゃった」

当の本人を前にそんな話をしているこの状況が可笑しくて、話してるうちになんだか楽しくなってきた。

目の前の裕太は、心配げな目をしてるのに。

「探さなかったわけ？元カレのこと」

「探したけど、もういなかった」

新しいドリンクを注文しながら気付く。

私、さっきから口元が緩んじゃってる。

いい機会だったのかもしれないな、今夜は。

ようやく、裕太のことが吹っ切れそうな気がする。








「もう、その元カレのことは忘れちゃった？」

遠慮がちに聞かれたその言葉にも、私は平然と答える。

「だって、もういなくなったわけだし」

「もう、好きじゃない？」

だから…、裕太の顔をして、そんなこと聞かないでよ。

さっきまで楽しかったくせに、今度はじわじわと涙腺が緩んでくる。

かなり情緒不安定だな、私。

そんな私の様子に気付いた裕太は、慌てて次の話題を振ってくる。

「じゃあさ、１号には彼女とかいなかった？」

なんて答えたらいいんだろう。

さんざん悩んだ挙句、

「知らない」

と、シラを切ることにした。






その隙に私は、浮かびかけてた涙を必死で誤魔化そうとしていた。

そんなに簡単に裕太のことを忘れられてたら、こんなに悩んでない。

もう次の彼氏を見つけてるよ、きっと。

でもまさか裕太本人に「もう好きじゃない？」なんて聞かれてしまうとか…、どんな拷問なわけ？

だから私は必死で話題をすり替える。

「玉ちゃんって、志穂ちゃんと仲がいいよね？
志穂ちゃんとはどうなの？」

わざと意地悪な口調でそう聞いてみたら。

途端に裕太は、顔を顰める。








「飯塚さんはただの同期だから」

何故か不貞腐れて答えてきた裕太は、恨みがましい目線を私に送ってくる。

「でもかなり仲良さげじゃない？」

「そうでもない」

その言い方。

昔の裕太みたい。

こんな時に不意に、昔の裕太が顔を出してくる気がして、その度にやるせない気持ちになる。

もう私は、裕太とは会わない方がいいんじゃないかな。









「飯塚さんのことは、そんな風に考えたことはないから
ああいうガンガン人の距離間関係なしに詰めてくる子は、好きじゃない」

裕太は早口でそう言っては、ぷいっと横を向いてしまった。

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