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正直…、驚いた。

だって、さっきまで裕太はほとんど無言だったっていうか…。

たまに宮田くんに突っ込んだり、軽く笑ったりする程度で。

てっきり私は、嫌々ここに連れて来られたんだとばかり思ってた。

なのに、まだ私と話がしたいとか、どういう意味で言ってるんだろう。

だけど裕太の目は意外と真剣で、あっさり流してしまうのはためらわれた。

「行くってどこに?」

表情を探るように訊いてみたら、裕太の目は急に戸惑いの色になる。

「あー…、俺、店とかよく知らなくて
もしAさんがいい店とか知ってたら、教えて欲しいかも」

その言い方が知り合った頃の裕太とダブって、一瞬だけ時空が歪んだような気分になった。

もしかして、目の前にいる裕太は、本当は記憶なんか失ってないんじゃないかとか。

記憶喪失のふりをして、私を驚かせようとしてるんじゃないかとか。

でも、そんなことありえないのに。









昔よく2人で行った店に誘ってみることにした。

裕太は店の前で、一旦足を止める。

じっと店の外観を眺めて、チラリと店の中を覗き込んだ裕太は、

「…ここ、もしかして俺、来たことあるとか?」

不安そうな目をして私を振り返った。

「あるよ」

「何回も?」

「うん、何回も来てる」

「…そっか」

裕太はそれきり口を閉ざして、そのまま店の中に入って行く。






いつも座ってた席についてすぐに、裕太はこんなことを言い出した。

「1号はこういう時、どんな話をしてた?」

「…1号?」

「ああ、なんか過去の自分と比べられることが多いから
過去の自分を1号って呼んでるんだけど」

「じゃあ、今の玉森くんは2号?」

「そう
俺はそんな風に捉えてる」

「じゃあ、過去の玉森くんのことは1号って呼ぶとして
…1号は会社では必要最小限のことしか話さないけど、こういう場ではよく話してたよ」

「俺とAさんと宮田の3人で?」

「うん、よく3人で来てた」

「そっか…」

それからまた、しばらくの沈黙が続いて。

裕太は思い詰めた風の目をして、こんなことを訊ねてきた。









「1号とAさんって、…もしかして特別な関係だった?」

一瞬、息が止まりそうになった。

どう答えるのが正解なのか、即時には判断できなくて、

「前にも聞かれたよね、それ」

とか、平静を装った風で聞き返してしまう。

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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時

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