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−You Side−
それから数十秒、険悪とは言わないが不穏な空気が私たちの間に漂う。
とりあえず、好きな人の有無だけ言えば良いんだよね。うん。
『好きな人は__』
後の事は知らない、と意を決して言葉を紡ぐ。
けれど、いちばん大事なところで、言わせまいと携帯の着信音が鳴った。
メールではなく電話。緊急かもしれないし無視するのもあれだな、と渋々スカートのポケットからスマホを出す。
液晶には、「あんずちゃん」の表示。
くだらない人からであれば切ろうかと思っていたが、あんずちゃんだったら別だ。
出るね、と英智くんにアイコンタクトで伝え、応答して耳に当てる。
『…もしもし、あんずちゃん?』
《もしもし、あんずです!》
いつもよりかは、大きめの声量の彼女。焦っているように窺える。
《すみません! まだ先輩の休憩時間は終わっていないんですけど、ちょっとしたトラブルが発生しまして……人手が足りないので至急来てもらっても良いですか?》
再度、本当にすみません! と謝ってくるあんずちゃん。
トラブルが発生したのならば、行かないわけにはいかない。
すぐさま了承し、電話を切った。
『……と、いうわけで私行かなくちゃだから……! 最後まで付き合えなくてごめん!』
改めて、英智くんの方に向き直る。その彼は、電話の内容は全てお見通しだよ、という笑みでこちらを見上げていた。
「構わないよ、行っておいで」
手をひらひらと振りながら、見送ろうとしてくれている英智くん。
……彼は、話し方や動作、全てが優しくて。愛おしさが、溢れてしまいそうになった。
『……ふふ、行ってくるね!』
「うん、行ってらっしゃい」
お互いに手を振り合い、私は先に屋上をあとにした。
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ひなたりん(プロフ) - 紫水さん» お久しぶりですね!この作品面白くて大好きです!反応集の更新頑張ります(`・ω・´) (2020年7月26日 10時) (レス) id: 0e1418e0b0 (このIDを非表示/違反報告)
紫水(プロフ) - ひなたりんさん» ひなたりん様!お久しぶりです〜!!ペコリ((・ω・)_ _)) 明日中には続編公開予定なので、是非楽しみに待っていてください〜!! こちらも、反応集の更新楽しみにしていますね´`* (2020年7月25日 23時) (レス) id: 0c629b66c9 (このIDを非表示/違反報告)
ひなたりん(プロフ) - ぞ、続編!?楽しみに待ってますね!紫水様ほんと好きです← (2020年7月25日 23時) (レス) id: 0e1418e0b0 (このIDを非表示/違反報告)
紫水(プロフ) - 烏賊さん» 返信が遅くなってしまいすみません!コメントありがとうございます!!英智くんの可愛さが、きちんと読者さんに伝われているようならとっても嬉しいです…!! (2020年7月6日 22時) (レス) id: 0c629b66c9 (このIDを非表示/違反報告)
烏賊(プロフ) - 英智くんめっちゃ可愛いな... (2020年6月30日 20時) (レス) id: 407f6d7981 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫水 | 作成日時:2020年5月20日 14時