この手を離すな【銀魂】4

癖のある紫煙 ページ40

「あとは八百屋さんに行って、…あ！」



お昼の買い出しに出ていると
マヨネーズのまとめ買いをし過ぎたのか、
両手がいっぱいになってしまい、
ぽたぽたと袋からマヨネーズを落としてしまった。



町「おいおい、お嬢ちゃん。
落としてるよぉ」


「すみません…」



後ろを歩いていた、
男性ふたりが拾って手渡してくれる。
頭を下げ、お礼をしながら受け取る。



「ありがとうございます」


町「わあ」


町「え？何、超美人じゃん。
どこのお店にいるの？え？お好み焼き屋？」


町「お好み焼きにこんな美人いるかよ！
あ、すまいるじゃね？
もうだだ漏れてるもん、色気がだだ漏れだもん」


「あ、えと、」


町「何、買い出し？俺持ってあげるよ。
常連になってあげっからさ、
指名してあげっからさ、
名前は？名前なんて言うの？」


「Aで、…わっ」


町「何肩組んだだけで驚いてるの！
慣れてるでしょうー！
ねね、今からちょっと一緒に遊ぼうよ」


「わ、わたし、仕事中で」


町「客を大事にするのも仕事の内だろう？」


町「いいから、いいかr…っ痛っ！？」


「…！？」



わたしの肩に回されていた腕が
いきなり剥がされ、一瞬にして
上げられた腕が捻り回された。



町「おい、なんだてめ、…ひっ！」



笠を眼深く被ったその人は、
無言で彼らを睨みつけたようで
その畏怖は彼らの慄く表情だけで伝わった。

ちっ、と舌打ちをして
バタバタ去っていく姿を呆然と見届けていると
笠の方が散らばったマヨネーズを拾い、
わたしに手渡してくれていた。



「…あ！すみません！
助けていただいて、ありがとうございました」


？「あんな眼付きをすりゃ、
色狂どもは誤解する。気をつけろ」


「眼付、き…はぁ、すみません…。
あ、あの、お名前とお礼を！」


？「……必要ねえよ、A」



少し顎を上げ覗かせた
右眼で、一瞬眼が合った。
左眼には包帯が巻かれていたように見えた。



「…え、なんで名前、」


全「あれ？ねえ、君もしかして…」


「え？」


全「ああ！やっぱそうだ！！
Aちゃんだろ？あの、四辻事件の」


「…ど、どなたですか？」


全「悪い悪い！俺ね、あの天パ、
…あーと、万事屋！万事屋の知り合いなの」


「え！銀時さんの！？
……あ、あれ？さっきの人は…」



銀時さんの知り合いだと
名乗る人と話している間に、
笠の人は立ち去ってしまっていた。

一瞬だったのに、とても記憶に残る
妖艶な空気と癖のある紫煙を残して。

終わり ログインすれば
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