どっかおかしい ページ28
5年。
出ていなかったから、
懐かしいなんて記憶はない。
それよりも、
昼前の陽射しが眼に沁みて
とぽとぽ歩きながらも目眩がしてしまう。
ああ、笠借りて来たら良かったかしら。
どんっ…!!
「あ!すみません…!」
?「ああ、大丈夫ですかぃ?」
「え、ええ。大丈夫です。
すみませんでした」
?「あー、ちょっと待ってくだせぇ」
「…はい?」
ぶつかった肩を掴まれ、呼び止められる。
振り返ると見覚えがある黒い制服が見えた。
何度か、瞬きをしてその顔を見上げる。
随分と若そうだけれど、この人も、
?「あんた…、この辺は初めてですかい?」
「えっと、久しぶりって感じですかね」
?「ふぅん。どうりで、
どいつもこいつも見てる訳だ」
「え?」
?「気付いてねぇのか、すげぇ目立ってますぜ」
そう言われ、周りを見渡すと
道行く人にもお店の人にも見つめられていた。
今日は化粧っ気もないし
ボサボサまではいかなくても
髪も下ろしたままで、変に着飾っていないから
目立たないだろうと思ったのにな。
出掛ける普段着、が分からなかったのだ。
わたしは、目の前に立ち
赤い眼を見開いて、わたしを見下ろす
栗色の髪の毛のこの人に視線を戻す。
「…あ、のわたし、
何か法を犯しましたでしょうか。
どこか、おかしい格好をしていますか?」
?「あ?」
「あなた、その制服…
真選組の方ですよね?」
沖「ああ。真選組の沖田総悟でさぁ。
俺のこと知らねぇってことは
ほんとに久しぶりらしいねぇい」
真選組隊士は有名人なのかしら?と
首を傾げると、あんたは?と顎を上げた。
「…、Aです」
沖「Aね。で、
ふらふらしてやしたけど、どこかに行くんで?
久しぶりな挙句、体調が優れねぇようなら
お巡りさんを頼るって手もありますぜ」
「あ、ああ…そういうことですね。
ありがとうございます。えと、
ここに行きたいんですが、ご存知ですか?」
沖「名刺か…。
…………なんでここに行きたいんでさぁ」
「ご存知なんですか?
えと、知り合いがここのご主人なので
逢いに行こうと思っていて…」
沖「旦那の知り合い?
旦那の周りにはまともな女がいねぇが、
Aもどっかおかしいんで?」
この人も随分、不思議な人だ。
警察なのに親切でもないし、
初対面だろうが
年齢の差だろうが全く介さない。
沖「まあ、いいや。
着いて来な。送ってやりまさぁ」
「…え?!」
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作者名:美雨 | 作成日時:2019年2月27日 23時